2022 年 81 巻 6 号 p. 520-549
併存疾患の治療目的で入院した認知症高齢患者の看護について報告されている文献のスコーピングレビューを行い,その特徴を明らかにすることを目的とした.Ovid(MEDLINE,PsycINFO,EBMR,Joanna Briggs Institute EBP Data base,Books@Ovid),EBSCO host(CINAHL,eBook Collection),Scopus,PubMed,EMBASE,Web of SCIENCE,医学中央雑誌Web版Ver.5,最新看護索引Web,JDream Ⅲのデータベースを使用し,Arksey and O’Malleyのフレームワークを用いてスコーピングレビューを行った.文献は2名のレビュー者によってカテゴリーに分類された.年代で比較した結果,報告されている文献は2000年以降に多く,和文献は英文献数の3倍の数が検出された.また文献の種類は研究が多く,主題や目的等によってカテゴリーに分類した結果,「併存疾患の治療に関する援助」「日常生活行動」「安全対策」「看護師の認識」「せん妄」「退院支援」「対象理解」「BPSD」「認知症看護教育の評価」「代替療法」「看護師の感情」「病棟・病院全体の取り組み」「看護全般」「コミュニケーション」「家族の思い」「専門家のケア」「エンドオブライフケア」「意思決定支援」「チームケア」「権利擁護」「その他」の21に分類できた.和文献にあって英文献にみられなかったカテゴリーは,「権利擁護」「代替療法」「チームケア」であった.入院する認知症高齢患者の看護に関する文献は,時代や認知症看護の変遷と共に数や種類が増え,内容も多様化していた.今後,認知症看護の実践内容そのものに関することや,その効果に焦点を当てて,事例検討や研究に取り組む必要があると考える.