昭和学士会雑誌
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原著
医系総合大学におけるスポーツ傷害調査
加賀谷 善教堀川 浩之田中 一正下司 映一安部 聡子藤巻 良昌三邉 武幸
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2017 年 77 巻 1 号 p. 40-47

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抄録

本研究は,スポーツ傷害予防モデルに基づき,第1ステップとして学内で発生する運動による外傷・傷害の実態を把握し,本学学生に対するスポーツ医学教育の展望を検討することを目的とした.対象は,本学に在籍している1年生全員(575名),2~6年生については体連関係クラブに所属している学生(1,440名)とした.1年生は集合調査法とし,アンケート調査の趣旨を十分に説明したうえで,同意した学生のみマークシートをその場で回収した.体連関係クラブに所属している2~6年生については代表者を集めてアンケートの趣旨を説明し,クラブに持ち帰り各部員が回答後,クラブごとに提出させた.アンケート回収率は,1年生が99.7%,2年生以降の体連関係クラブ部員が35.4%であった.その結果,本学の1年生は12.4%,2~6年生の体連関係クラブ部員は19.8%がスポーツ傷害を経験していた.部位別の発生件数は,1年生では手指・手関節が最も多く,続いて足部・足関節,股関節・大腿部の順であった.2~6年生は膝関節が最も多く,続いて足部・足関節,股関節・大腿部の順であった.運動時間とスポーツ傷害の関係については,スポーツ傷害の経験を有する学生が有意に運動時間が多かった(p<0.01).スポーツ傷害が発生した際の対応に関して,学年が進むとスポーツ傷害への対応に向上が認められた.一方, 2~6年生においても「附属病院ではなく近隣(または地元)の病院を受診する」が12.4%であり,「保健管理センターに相談する」や「直接,附属病院を受診する」より多く,今後は,スポーツ傷害の発生状況を把握するためのシステム作りが必要と思われた.スポーツ傷害の予防に向けての取り組みに関して,1年生は「特に何もしていない」が50.6%,2~6年生は20.0%で,1年生の予防に対する意識が低いことがうかがえた.今後は,医系総合大学の特徴を活かしたスポーツ医学教育の構築が望まれる.

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