環境評価手法の中で人々に選好を直接たずねる「表明選好法」が注目を集めているが,表明選好法はアンケートを用いることからバイアスの影響を受けやすいという欠点がある.本論は,表明選好法のバイアスを経済理論モデルによって分析することで,バイアスを回避するための対策を示すことを目的とする.代表的なバイアスとして,回答者が意図的に回答を偽る「戦略バイアス」,表明額が実際に徴収されないことによって生じる「仮想バイアス」,税金や基金などの支払い手段が影響する「支払手段バイアス」を検討した.また,これまではバイアスとしては考えられていなかった抵抗回答も,戦略バイアスの一つとなりうることを示した.