1971 年 81 巻 4 号 p. 299-
皮膚のlipogenesisは皮膚代謝活動の比較的鋭敏な指標であるといわれる.代謝異常,たとえば糖尿病でその活性は低下し,乾癬など表皮細胞のturn overのいちじるしく亢進した場合,活性は急速に増加する.病的な皮膚では燐脂質やステロールの量的な変動を生ずる.食事(絶食)あるいは恐らくホルモンに対する影響にも鋭敏であろう.角層の形成や表皮細胞そのものの構成に脂質は重要な関係を有している.皮表の脂質はくわしくしらべられてきたが,そのわりに表皮の脂質生合成に関する知見は少ない.著者は表皮の脂酸生合成系をしらべ,表皮細胞における脂酸合成系は可溶性画分のいわゆるmalonyl CoA pathwayとミトコンドリア画分のelongation,マイクロゾーム画分の混合系よりなることを確認した.成績の概要を報告したい.