日本皮膚科学会雑誌
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全身性強皮症における小唾液腺生検所見の解析
藤澤 崇行原 典昭山蔭 明生山崎 雙次
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1998 年 108 巻 14 号 p. 1945-

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抄録

全身性強皮症(以下PSS)患者80例の下口唇粘膜より小唾液腺生検を施行し,シェーグレン症候群(以下SjS)との合併症などにつき検討した.1)PSS患者80例中,厚生省のSjS診断基準を満足する症例は36例(45%),自覚的に乾燥症状を欠く潜在性SjS(subclinical SjS,以下sub. SjS)は15例(18.8%),SjSが認められない症例は29例(36.2%)であった.PSSの病型別では,limited type(以下L型)はSjSは53例中28例(52.8%)に認められ,diffuse type(以下D型)の27例中8例(29.6%)に比してSjSの合併率が高い傾向がみられた.2)自覚的に何らかの乾燥症状が認められた症例は80例中39例で,うち24例は眼・口腔共に,13例は口腔のみ,2例は眼のみであった.一方,他覚的に乾燥性角結膜炎は78例中27例(34.6%),sialography検査では68例中29例(42.6%)に陽性所見がみられた.また免疫学的に抗SS-A抗体は80例中11例(13.8%)に陽性であり,いずれもSjS群およびsub. SjS群に属する症例であった.なお抗SS-B抗体は80例全例で陰性であった.3)80例中30例(37.5%)に小唾液腺生検で組織学的に同一小葉内の導管周囲に50個以上の炎症性細胞浸潤が認められ,うちL型は53例中23例(43.4%),D型は27例中7例(25.9%)であった.また小唾液腺小葉周囲に中等度および高度に硬化性病変が認めれらたものは80例中39例(48.8%)で,うちL型は53例中16例(30.2%),D型は27例中23例(85.2%)であった.なお免疫組織化学的所見で浸潤リンパ球は主にCD4陽性αβT細胞であった.4)小唾液腺生検所見の経時的変化を6例で検討した.1例は2度の生検所見がいずれもH3であったが,当初乾燥症状は認められず,9年後の2回目生検時には乾燥症状が出現していた.しかし他の5例は自覚症状および生検所見に明らかな経時的変化は見られなかった.PSS患者では,従来考えられていた以上にSjSを伴うことが多く,またPSSにおける小唾液腺生検はSjSの合併を比較的容易に確認することができ,同時に粘膜の硬化性病変の有無,程度を知ることができる有用な手段と考えられた.

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© 1998 日本皮膚科学会
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