臨床化学
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分子標的治療薬の現状とその有用性判定のための遺伝子研究
鶴尾 隆
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2005 年 34 巻 2 号 p. 93-101

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抄録

最近のヒト細胞のバイオサイエンス研究の進展に基づいて、細胞の機能を明確にし、疾患に関与する遺伝子産物を標的として、特異性をもって作用する薬剤の開発が進んでいる。これが分子標的薬剤であり、それを治療に用いるのが分子標的治療である。当然薬の効果も、対象の分子標的に作用することによる薬理効果として証明する必要があるが、新しい興味深いアプローチである。
これら分子標的薬剤に関して、代表的なポストゲノム研究であるマイクロアレイによる遺伝子発現解析とSNP解析によって、感受性のある集団を如何に選択するか、毒性を示す集団を如何に除外するかが可能になることが明らかになりつつある。このような遺伝子研究によって将来、科学的エビデンスに基づく分子標的薬の投与が可能となり、無効な薬剤の投与を回避し、最適な薬剤を最適量投与するテーラーメイド治療が実現し、またがん化学療法において大きな問題となっている副作用の発現率を低下させることができる。がんの化学療法は将来その研究が大きく変わっていくことが期待される。

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