石炭灰は火力発電所などから年間約1,200万トン排出され,約7割がセメント分野で有効利用されている。将来,火力発電所の増設や処分場の残余容量のひっ迫が予想され,一層の利用拡大が求められている。筆者らは,石炭灰を防潮堤などの盛土材に活用することを目的として,石炭灰をセメント等で不溶化した材料の溶出特性を調べ,高炉セメントとカルシウム系助材の組合せが適していると判断した。そして,石炭灰改良土を用いて実規模の防潮堤を構築し,約2年半にわたって盛土材の長期モニタリング調査を行った。試験期間中,定期的に堤体からボーリングコアを採取し,一軸圧縮試験と利用有姿による溶出試験を行った結果,圧縮強度は目標を十分上回り,重金属等の溶出量は土壌環境基準以下であった。これより,盛土材としての環境安全性を確認できた。