日本惑星科学会誌遊星人
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みんなでふたたび木星へ,そして氷衛星へ その5〜ガニメデレーザ高度計G A L Aで測る 氷の世界と地下の海〜
塩谷 圭吾 木村 淳小林 正規荒木 博志野田 寛大並木 則行押上 祥子石橋 高東原 和幸齋藤 義文フスマン ハウケGALAチーム
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2020 年 29 巻 3 号 p. 153-170

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抄録

表面を氷に覆われた「氷天体」.その代表格である木星氷衛星において,内部に海が存在する 可能性をガリレオ探査機が示唆してから約20年 − 欧州宇宙機関(ESA)が主導する木星氷衛星探査機 (JUICE)は,2022年の打ち上げに向けてその開発が進められている.JUICEは2029年に木星系に到達し, エウロパ,カリストのフライバイ観測,およびガニメデでは極周回軌道からの詳細観測を行う予定である.

ガニメデレーザ高度計(GALA)はJUICEの科学観測機器のひとつであり, 氷天体に適用される初めてのレーザ高度計である.GALAの科学目標の柱は(1) 地形情報にもとづく氷テクトニクスの理解 , ( 2 ) 潮 汐 応 答 の測定を通した内部構造の理解(地下海の存否確認や特徴把握を含む),(3)表面の小規模粗度と反射率の理解,である.地下海を含むサイエンスは,アストロバイオロジーの観点からも意義が大きい.

これらの科学目標のため ,GALAは軌道上から氷衛星表面への距離測定 (測距) を高密度・高精度で繰り返し行う.特にガニメデについては全球にわたって,地形情報だけでなくマクロな表面変位および回転変動, さらに小規模粗度と反射率を計測する.測距においてはノミナル高度500 kmから送信レーザパルス(17 mJ, 波長1064 nm,ノミナル30 Hz/最大50 Hz)を氷衛星表面に照射し(ノミナルスポットサイズ50 m,スポット 間隔50 m),反射パルスを受信して,送受信パルスの時間差から距離を求める.小規模粗度と反射率の情報 は,受信パルスの強度やパルス幅の時間的広がりから得る.好条件地点での測距精度は約1 mである.

GALAの開発はドイツを中心に,日本,スイス,スペインのチームによる国際協力によって進めている.日本チームは心臓部とも言える受信部の3つのモジュール(後置光学系モジュール(BEO) ,焦点面機器モジュール(FPA),アナログエレクトロニクスモジュール(AEM))を開発する重要な役割を担っている.本稿ではJUICEおよびGALAの概要,科学目標,および機器開発について解説する.

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