霊長類研究 Supplement
第39回日本霊長類学会大会
会議情報

ポスター発表
高等霊長類における第3-6頸椎の形態特徴
菊池 泰弘
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 49

詳細
抄録

霊長類種には様々な移動運動様式が認められ、頭部を支え前肢筋の起始となる頸椎は、それぞれのロコモーションに適応した形状を有していると考えられる。しかし、現生の霊長類において、環椎・軸椎以外の頸椎の比較研究は今までほとんど行われていない。そこで本研究では、第3-6頚椎の形態について調査を行った。大型類人猿・チンパンジー(Pan troglodytes)、小型類人猿・シアマン(Symphalangus syndactylus)、地上性四足歩行の旧世界ザル7種、樹上性四足歩行の旧世界ザル4種、アームスイング移動運動を含む樹上性旧世界ザル2種、大型の新世界ザル2種におけるオス1頭、メス1頭(いくつかの標本についてはどちらかのみ)の骨格標本を用いた。頸椎の総標本数は107点で、すべての標本をCT(Bruker Sky-scan 1275)撮像し三次元再構築した。得られたデータの表面形状を座標系に展開して相同点100点を決定し、Procrustes解析によるサイズの正規化および位置合わせ後、座標(シェープ)を主成分分析で解析した。その結果、第1(20.09%)および第2主成分(14.03%)による散布図では、大型類人猿のみが他の霊長類と異なる位置を示し、体サイズによる影響が示唆された。また、第5(6.25%)および第6主成分(5.03%)による散布図では、シアマンとアームスイングを含む樹上性旧世界ザル、新世界ザル2種、それ以外の霊長類種がそれぞれクラスターを形成し、移動運動様式に適応した形態特徴を有する可能性が示唆された。本研究はモンキーセンター・連携研究、京都大学霊長類研究所(現・京都大学ヒト行動進化研究センター)共同利用研究JSPS科研費 JP20K06835の助成を受けたものです。

著者関連情報
© 2023 日本霊長類学会
前の記事 次の記事
feedback
Top