霊長類研究 Supplement
第32回日本霊長類学会大会
セッションID: P45
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ポスター発表
距骨と踵骨からの体重推定:霊長類と様々な哺乳類との比較
鍔本 武久
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抄録

【背景】距骨・踵骨は適度に扱い易いサイズで、よい状態で化石として発見される確率が高い。さらに、容易に同定できる特徴的な形態で、また行動形態をよく反映している。また、化石霊長類の体重は、古生態の研究に重要な要素である。これまで発表者は、距骨・踵骨サイズと体重との関連性を調べてきた。【問題点】しかし、距骨サイズと踵骨サイズとの対応関係やその関係を考慮した体重との関連性について考慮しないと、骨サイズ間の関係と体重・行動様式との関連性にまで発展させるのは難しい。【目的】そこで、霊長類と様々な哺乳類の距骨・踵骨サイズを計測して、これらのサイズ間の関連性および体重との関係を比較検討した。【資料と方法】標本は霊長類を含む哺乳類の成獣48種80個体で、体重は18グラム~3.4トンまでのものである。自然対数変換したそれぞれの計測値と動物の体重との相関関係を、ステップワイズ重回帰分析および単回帰分析により検討した。【結果・考察】距骨からの体重推定においては、霊長類に対しておよび様々な哺乳類に対して共に「距骨の滑車の幅」が非常に適していることがわかった。距骨からの体重推定においては、霊長類に対しておよび様々な哺乳類に対して共に「後距骨関節面の幅」が非常に適していることがわかった。脛骨・腓骨からの体重を主に受け止める距骨では主に脛骨との接触面が広い滑車の幅が、踵骨ではその距骨との関節面との幅が、哺乳類全体の体重推定においては適しているようである。つまり、この二つの「幅」は、行動様式よりも体サイズにより制約されている可能性がある。この二つの「幅」と他の部分のサイズとを比較していくことによって、行動様式を推定する新たな要素が得られる可能性があるかもしれない。

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© 2016 日本霊長類学会
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