霊長類研究 Supplement
第31回日本霊長類学会大会
セッションID: PN7
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ポスター発表
京都市動物園における霊長類学初歩実習: 北野高校の取り組み
瀧山 拓哉杉江 勇哉中田 希穂藤本 嵐山口 美緒川上 文人
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抄録

京都大学リーディング大学院霊長類学・ワイルドライフサイエンスと大阪府立北野高等学校の高大連携事業及び、北野高校の授業の一環として、大学生と高校生が京都市動物園において観察を行っている。高校生は動物園で長時間霊長類を観察することを通じて霊長類学に触れ、フィールドワークの精神を実感することにより、通常の高校での授業とは異なる、答えのない問題に挑戦するという経験を積むこととなる。そして普段教えてもらう立場である大学生が研究の指導経験を得ることが本実習の目的である。
京都市動物園において飼育されている霊長類のうち、0歳から3歳のアカンボウ、またはコドモがいるチンパンジー(Pan troglodytes),ゴリラ(Gorilla gorilla),マンドリル(Mandrillus sphinx)という3種を対象とした,自然行動観察並びに認知科学実験中の行動観察を行っている。手続きは月に1,2回、1種あたり1時間観察するというものであった。
実習開始から間もない現時点では観察結果について述べるにはデータが限られているため、本要旨においては高校生による観察そのものについて述べることとする。高校生には指導役である大学生から観察テーマを与えることなく、主体的に探索的観察を促している。その結果,高校生たちは発達速度の種差、各個体の行動パターンについて従来の枠組みに囚われない柔軟な視点から観察を行っている。社会的関係,感情表出,ナックルウォークやブラキエーションといった運動に関心を抱いた高校生が多かったため、それらに焦点をあてた発達的変化や3種間の種差について探ることが、今後の観察の方向性として考えられる。現時点ではアドリブサンプリングでノートに記録する観察を行っているが、必要に応じてビデオカメラによる記録を分析する研究法に移行する。継続的な観察により、新たな霊長類学の芽が生まれることが期待される。

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© 2015 日本霊長類学会
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