霊長類研究 Supplement
第31回日本霊長類学会大会
セッションID: P50
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ポスター発表
勝山ニホンザル集団における突然の大きな音に対する反応
中道 正之
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抄録

自然場面では、木が倒れたり、大きな石が落下したりして、突然に大きな音が発生する場合がある。このような突然の大きな音に対して、ニホンザルはどのように反応するのだろうか。
この疑問に答えるために、勝山ニホンザル集団(岡山県真庭市神庭の滝)のメンバーが餌場近辺に滞在中に、「大きな音」がした際の行動をアド・リブ法で記録した。1995年4月から2014年7月までの18年間に計23回の「大きな音」の発生に遭遇し、その時に、①音の原因、②音が発生した時の集団の状況(休息時か給餌時など)、③複数の個体が避難行動したか、④音声を発した個体などを記録した。
サルが餌場近辺で休息しているとき、「大きな音」は木が倒れた時、あるいは、石が山の斜面から落下し、餌場近辺の地面に当たった時に発生した。「大きな」音の発生と同時に、23事例のうちの22事例で、1頭あるいは2頭以上のオトナオスが、ゴッゴッという吠え声を発した。他方、メスの音声表出は1事例のみであった。音声表出したオトナオスは優劣順位1位が10事例で、2位が11事例であり、他のオスは2事例以下であった。さらに、現場近くにいたオトナオスの中で、最高位のオスのみが発声したのが、音声表出個体が確認できた21事例のうちの14事例であった。また、現場で最高位オスと他のオスとの複数頭が音声表出したのが5事例あった。
サルは、たとえば、近くを転げる石を視認しながら、大きな音を聞くので、突然に発生する大きな音そのものが危険でないことが即座に判別できることが多いと思われる。にもかかわらず、このような大きな音に対して、現場近くにいるオスの中で、優位なオスが最も吠え声を発しやすかったという結果から、この音声表出が誇示行動であると推察できる。

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© 2015 日本霊長類学会
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