主催: 日本霊長類学会・日本哺乳類学会大会
西中国地域のツキノワグマは,本州最西端の孤立個体群であり,生息数が少ないことから「絶滅のおそれがある地域個体群」として,1998年に環境省のレッドデータブックに掲載された.そのため,広島県,島根県および山口県では 1993年以降順次に「ツキノワグマ保護管理計画」を策定するなど,全国的にみても比較的早い段階から保護管理の取り組みが始まった.また,生物学的な単位である個体群を管理するために,個体群の分布域を共有する三県が一体となって保護管理に取り組んでいる.本ミニシンポジウムでは,三県の協力体制を作るに至った行政および研究者の立場からの経緯,また地域の研究者,行政の担当者の活動を報告し,西中国地域におけるツキノワグマ保護管理対策の現状と課題,および今後の展望について議論する.
趣旨説明
田戸裕之(山口県農林総合技術センター)
演題1 西中国個体群の保護管理の歴史と特定鳥獣保護管理計画の概要
藤井 猛(広島県自然環境課)
西中国地域3県では,モニタリング調査や特定計画の策定等,早い段階から3県で連携してツキノワグマの保護管理対策に取り組んできており,広域連携の先駆けとも言える.これまでの3県連携の取組みの歴史と,特定計画の概要について紹介する.
演題2 鳥獣専門指導員及びクマレンジャーの活動
澤田誠吾(島根県中山間地域研究センター)
特定計画の目標達成のために取り組んできた島根県の「鳥獣専門指導員」と広島県と山口県での「クマレンジャー制度」について紹介する.
演題3 鳥獣専門指導員の現場活動
静野誠子(鳥獣専門指導員,島根県西部農林振興センター)
被害発生等があれば,鳥獣対策専門員はすぐに現地に駆けつけて,誘引物の除去や電気柵の設置を住民と一緒に行っている.鳥獣専門指導員が現場での活動を紹介する.
演題4 西中国山地におけるツキノワグマの餌資源について
中村朋樹(山口大学大学院農学研究科),細井栄嗣(山口大学農学部)
ツキノワグマの出没予測のため,2012年度より三県が一体となって,堅果類およびクマノミズキの豊凶調査を開始した.その調査について報告する
演題5 時期特定計画へ向けた取組み
藤井 猛(広島県自然環境課)
西中国地域では,次期特定計画(2017年度~)に向けて調査等を実施していく予定にしており,今後の取組みやスケジュールなどの予定を紹介する.
コメント・統合討論