霊長類研究 Supplement
第22回日本霊長類学会大会
セッションID: P-36
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ポスター発表
大型類人猿情報ネットワーク(GAIN)における資源配布システム
*倉島 治落合-大平 知美赤見 理恵吉川 泰弘松沢 哲郎平井 百樹長谷川 寿一
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抄録

大型類人猿情報ネットワーク(GAIN)では、大型類人猿に関する研究と福祉を支援する目的で、死亡大型類人猿を主な対象とした資源配布や飼育個体全体の情報整備をおこなってきた。2006年4月までに18件(再配布を除く)の大型類人猿由来資源を配布した。今回、資源配布事例を類型化し、今後の資源配布システムの課題を検討した。配布における種別件数ではチンパンジー12件、オランウータン3件、ゴリラ2件、ボノボ1件だった。由来別件数では、死亡個体由来が14件、生体由来非侵襲が4件となった。配布パターンをみると、飼育施設にて直接サンプル配布をおこなった「飼育施設配布型」が1件あり、当初はこれが配布のひな形であった。しかし、飼育施設への負担が大きいため、その後この形式での配布はおこなっていない。現在は、飼育施設から協力研究機関へ資源を移動し、その機関から研究者へ配布をおこなう「協力機関配布型」が主流である。協力機関での配布はさらに、希望者による直接受領と機関からの発送に分けられ、現在では後者が多い。飼育施設から協力機関への資源移動もGAINが直接移送する形式と飼育施設から発送してもらう形式の2つに分けられ、資源状態などに合致する方法がとられてきた。配布資源に関しては、ほぼ「冷蔵や凍結の組織、臓器サンプル」のみの状態から、「固定やDNA、RNAサンプル」までをカバーするようになってきた。全体として、研究利用者の利便性向上へ向けたシステム整備が中心であり、飼育施設の負担軽減や、研究成果を収集し、飼育施設へ還元する点などは遅れている。これまでは多様な大型類人猿研究を支援するため、配布事例ごとに新たな研究需要へ対応してきた。そのため、資源配布システムのルール追加が頻繁であり、標準ルールの作成が遅れたことが原因として考えられる。今後は、配布形式の類型をもとにしたルール作成が課題となるだろう。

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© 2006 日本霊長類学会
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