霊長類研究 Supplement
第22回日本霊長類学会大会
セッションID: P-33
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ポスター発表
マハレのチンパンジー、Miyako集団(Y集団)の予備調査報告:隣接するM集団との行動比較
*坂巻 哲也中村 美知夫伊藤 詞子松谷 光絵西田 利貞
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抄録

チンパンジーの地域個体群内における行動的多様性と集団間関係の調査を目的に、タンザニア、マハレ山塊国立公園で調査が継続されているM集団の、北に生息するチンパンジーの人づけに本格的に着手した。マハレでは1965年にチンパンジーの調査が始まって以来、M集団とその北に隣接するK集団の2集団のチンパンジーが調査されてきたが、その後K集団が消滅して以来、M集団以外の調査はほとんどおこなわれてこなかった。しかしここ数年、M集団の遊動域の北に他群のチンパンジー個体が遊動していることが確認されるようになってきた。2002年以来、この集団は餌づけが試みられたが、2005年から人づけを中心とする調査に切り替えた。遊動域内に複数の観察路を作り、発声、糞や食痕などの間接証拠を収集し、可能なときには直接観察もおこなった。今回は、2005年9月から2006年2月までの最新の調査の結果について、おもに報告する。少なくともオトナオス1個体、ワカモノメス1個体を個体識別した。かつて個体識別されたK集団の個体はこれまでに確認されていないことから、この集団はK集団と別の集団と考えられ、ミヤコ集団(Y集団)と命名した。糞分析からは、Y集団のチンパンジーがM集団と異なる食性を持っている可能性が示唆された。たとえば、Y集団ではオオアリの一種(Camponotus brutus)を大量に食べること、Scolopiaという果実を頻繁に食べていること、逆にMyrianthusがまったく食べられていないこと、などが同じ時期のM集団とは大きく異なっていた。これまでに確認されているところでは、Y集団の遊動域はM集団のそれと比べて、極めて小さい。Y集団がどこからどのように現われたのか、という問題は、チンパンジーの単位集団の変動を考える上で重要な資料となる。今後、Y集団と考えられているチンパンジーと、その隣接地域に生息するチンパンジーとがどのような関係にあるのかを、調査する必要がある。

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© 2006 日本霊長類学会
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