霊長類研究 Supplement
第22回日本霊長類学会大会
セッションID: B-19
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口頭発表
タンザニア,マハレM集団のチンパンジーによるベッド作成の際の場所と樹種の選択
*五百部 裕
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抄録

チンパンジーのベッド作成の際の場所や樹種の選択は、彼らの土地利用や遊動パターンに大きな影響を与えていると考えられる。また直接観察が難しい地域でチンパンジーの密度推定を行う場合、ベッドセンサスを行うことが多い。そしてセンサスで得られた情報からチンパンジーの土地利用などを考察する際には、チンパンジーの直接観察が可能な調査地で彼らのベッド作成行動の特徴を把握しておく必要があると考えられる。こうした観点から、チンパンジーのベッド作成行動についてはこれまでさまざまな調査地で研究されてきた。しかしマハレのチンパンジーを対象にしたベッド作成行動に関する研究はこれまでほとんど行われていない。そこでこの研究では、チンパンジーの長期継続調査によって、彼らの土地利用や遊動パターンに関する資料が大量に蓄積されているマハレにおいて、チンパンジーのベッド作成行動と彼らの土地利用や遊動パターンの関連を明らかにすることを目的とした。
今回の分析に用いた資料は、1995年8月~12月の現地調査の際に収集した。調査期間の前半が乾季、後半が雨季であった。M集団の遊動域内に三つのルートを設定し、1日に一つのルートを歩くという形式のルートセンサスを行い資料を収集した。センサスの際にルートから片側30メートル以内で発見されたベッドの場所、植生、「古さ」、高さ、樹種を記録した。植生については疎開林と森林の二つに分けて分析した。「古さ」は4段階に分けて記録したが、今回の分析では作成されて数日以内と考えられる「新しい」と判断されたもののみを使用した。各ルートのセンサス回数は、ルート1が5回(乾季2回、雨季3回)、ルート2が6回(乾季4 回、雨季2回)、ルート3が7回(乾季4回、雨季3回)であった。こうして得られた分析結果を、季節の違いやチンパンジーの土地利用パターン、チンパンジーの採食樹種と関連させて考察する。

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© 2006 日本霊長類学会
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