多発性筋炎(PM)は、骨格筋を標的とする自己免疫性炎症疾患であり、キラーCD8T細胞による筋組織傷害が基本病態とされる。従来、この病態を反映するマウスモデルがなく、PM研究は血清学ないし病理学的解析に留まってきた。しかし、我々は、PM基本病態を再現するマウス骨格筋Cタンパク誘導性筋炎(CIM)の開発に成功し、動態病態研究を行ってきた。その結果、CIMでは筋炎が完全フロイトアジュバント(CFA)処理を行った肢の筋に誘導され、CFAは、自己反応性T細胞の誘導を助けるばかりではなく、筋組織を活性化して局所へのT細胞浸潤を促すことが判明した。前者は種seeds、後者は土壌soilに似て、両者の協調が筋炎発症に必須だったのである。CIMマウス由来T細胞を用いた養子移入実験でも、CFAで処理した肢のみに筋炎が認められ、土壌の活性化は、toll様受容体リガンドでも代用できた。また、この際に、マクロファージが筋組織に現れて、炎症性サイトカイン産生していた。サイトカイン阻害薬を用いた実験では、インターロイキン(IL)-1や腫瘍壊死因子αは土壌活性化に役立ち、IL-6は種の活性化に寄与することが明らかとなった。また、再生筋組織からは、ケモカインが産生され、これも土壌活性化に寄与すると考えられた。CIMの抗サイトカイン治療は、その多くが有効であったが、それぞれに異なった病態を標的としていた。