【目的】 急性膵炎や重症熱傷では血清中可溶性接着分子レベルが疾患の重症度を反映することが報告されている。今回、急性肝不全例の血清中可溶性接着分子レベルと病態の関連について検討。 【方法】 急性肝不全39例(劇症肝炎29例と急性肝炎10例)及び健常人34例において、血清中sPECAM-1、sICAM-3、sE-selectin、sICAM-1、sP-selectin、sVCAM-1レベルを測定。 【結果】 健常人に比較し、劇症肝炎例において血清中sPECAM-1、sICAM-3、sE-selectin、sICAM-1レベルが高値であり、急性肝炎例においても血清中sPECAM-1、sE-selectin、sICAM-1レベルが上昇していた。急性肝不全39例では、予後不良23例(肝移植施行15例または死亡8例)において血清中sPECAM-1レベルが高値であり(877 ± 451 ng/ml vs. 552 ± 186: P = 0.012)、sICAM-1レベルが低値であった(1480 ± 686 ng/ml vs. 1943 ± 456: P = 0.037)。予後不良因子の検討では、単変量解析にて血小板数、直接ビリルビン/総ビリルビン比、プロトロンビン活性に加えて血清中sPECAM-1及びsICAM-1 レベルが予後と関連していた。Stepwise法による多変量解析では、血清中sPECAM-1 レベル(per 100 ng/ml; odds ratio 2.19, 95% CI 1.20-4.00) と血清中sICAM-1レベル(per 100 ng/ml; odds ratio 0.77, 95% CI 0.61-0.98)が予後と関連していた。 【結論】 血清中sPECAM-1及びsICAM-1について、急性肝不全の病態への関与と予後因子としの有用性が示唆された。