<背景>T細胞の中枢性免疫寛容機序としては、細胞除去、TCR改変による自己反応性の回避のほか、自己反応性TCRを有する細胞として末梢に出現する経路としては、Foxp3+制御性T細胞(Treg)への分化経路以外知られていない。本研究では、自己反応性T細胞の新たな制御・分化経路を明らかにするために、以下の遺伝子改変マウスを作成し解析した。 <方法>Rag2-/-×DO11.10マウスでは、全てのT細胞がニワトリ卵白アルブミン(OVA)に反応する単一TCRを発現している。また全身性核抗原としてOVAを発現しているトランスジェニックマウス(Ldn-OVA)と、Rag2-/-×DO11.10マウスを交配して作成したRag2-/-×DO11.10×Ldn-OVAマウス(RagDBL)では、全身性自己抗原反応性T細胞が胸腺で分化し、その多くがTregである。そこで本研究では、機能性Foxp3を欠損するScurfyマウスをRagDBLマウスに交配して、RagDBLsfマウスを作製し、Tregへの分化以外の経路の有無やその機能を解析した。 <結果>RagDBLsfマウスでは、加齢と共に皮膚炎が自然発症するが、皮膚以外の臓器障害は認めなかった。胸腺および末梢リンパ組織では、自己反応性T細胞受容体を有し、CD44high CD45RBlow CD62Llowの抗原認識後のT細胞が出現した。これらのT細胞はCD25、GITRなど従来のTregマーカーを発現せず、Tregとは異なる新たな自己反応性T細胞の分化経路が存在すると考えられた。更にこのT細胞は特徴的な表面マーカーを発現し、生体内ではanergicな状態と考えられた。このT細胞の機能、生体内での意義、野生型マウスでの存在について現在検討中である。