主催: 筑波大学大学院 人間総合科学研究科 疾患制御医学専攻 臨床免疫学
伴性劣性無ガンマグロブリン血症(XLA)は、BTK 遺伝子変異によりB細胞系の分化障害を来たす原発性免疫不全症である。本疾患では造血幹細胞の一部で変異遺伝子を修復し、かつそれが増殖優位性を獲得できれば分化障害を回復できる可能性がある。ヘルパー依存型アデノ・アデノ随伴ウイルスハイブリッドベクター(HD-Ad.AAVベクター)は、造血幹細胞に感染性を示すAd5/35キメラベクターと、相同組換えによる目的遺伝子座領域でのTargetingによる修復をおこすAAVベクターの両者の長所を備えている。我々はBTK遺伝子のexson 6~19とその隣接遺伝子TIMM8Aを含むgenome領域、およびEGFP・Hygromycin(Hyg)耐性遺伝子を搭載したHD-Ad.AAV.BTKベクターを作製した。同ベクターをヒト男性preB-ALL細胞株であるNalm6に感染させHygによるSingle cell cloningを行った。Hyg耐性株61株(0.63%)を得て、7株(0.073%)で相同組換えを証明した。全ての相同組換え株でBTK蛋白発現を認めた。同ベクターをヒト臍帯血CD34陽性細胞に感染させ10%程度の一過性GFP陽性細胞を認めた。
本ベクターにより相同組換えによるBTK遺伝子の変異修復を行える可能性を示した。今後、造血幹細胞での更なる検討を行う予定である。
研究協力:ワシントン大学 André Lieber