がんに対する特異的免疫療法を確立するため、我々はこれまで種々のがん抗原を同定してきた。IAPファミリー(Survivin, Livin)、Centrosomal protein (CEP55)、Hypoxia-induced protein (HIFPH3)など、機能的に興味深いがん抗原が見出されている。また、がん幹細胞特異抗原としてSOX2が同定され、臨床試験に向けて準備中である。 橋渡し臨床試験ではSurvivin2Bペプチドワクチンが先行している。ペプチド単独投与でも臨床効果の認められる症例を経験したが、インターフェロン併用プロトコルによって明らかに免疫効果が向上した。しかし、種々のがん種の中では乳癌が最も抵抗性であることが判明し、その機序に関して解析した。その結果、がん細胞におけるMHC class I抗原の発現低下が免疫逃避の一因となっていること、発現低下にはヒストン脱アセチル化の亢進が関与していることが明らかとなった。 BenchからBedへ、BedからBenchへ。がん特異的CTLを誘導するがんワクチンの橋渡し臨床研究の進展について報告する。