日本臨床免疫学会総会抄録集
Online ISSN : 1880-3296
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第36回日本臨床免疫学会総会抄録集
セッションID: W1-3
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クローン病におけるCD14+腸管マクロファージの病態への関与
*久松 理一鎌田 信彦岡本 晋日比 紀文
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抄録

腸管は病原体や食餌抗原などの外来抗原に恒常的に曝露されている特殊な組織である。その為、腸管に存在するマクロファージ(Mf)には免疫反応を抑制的に制御する機構が存在し、腸内細菌に対する過剰な免疫反応を制御することで腸管恒常性を維持していると考えられている。事実、ヒト正常腸管Mfは自然免疫反応に関わる受容体であるCD14の発現を欠き、腸内細菌に対し低反応性であることが報告されている。 今回我々は、クローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患ではCD14+CD33+CD68+腸管Mfサブセットが増加していることを見出した。興味深い事に、本サブセットは樹状細胞マーカーであるCD205, CD209も同時に発現しており、樹状細胞様の形質を持ち合わすユニークなMfサブセットであると考えられた。さらに、クローン病腸管粘膜から単離したCD14+腸管Mfは、腸内細菌刺激により多量のIL-23、TNF-aを産生した。 次に、クローン病腸管炎症におけるCD14+腸管Mfの役割を検討した結果、本細胞から産生されるIL-23はTNF-aと協調的に働き、腸管粘膜T細胞からのIFN-g産生を強く誘導した。さらに、上記のようにクローン病で産生亢進が認められるIFN-gはMfの分化に影響し、IL-23高産生のMfを分化誘導することが明らかになった。このIFN-g誘導性MfはIL-23産生能のみならず、表面マーカーにおいても腸管CD14+細胞と類似の樹状細胞様フェノタイプを示した。このことから、クローン病腸管におけるIL-23産生CD14+Mfの分化にIFN-gが関与していることが示唆された。 以上の結果より、クローン病腸管では、異常分化した腸管Mfから産生されるIL-23がIFN-g産生誘導を介してさらなる腸管Mfの異常分化を引き起こし腸管炎症の発症、持続に関与していると考えられる。

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© 2008 日本臨床免疫学会
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