主催: 大阪大学保健センター、大学院医学系研究科身体防御健康医学
【目的】マウス腹腔内癒着モデルを確立し、癒着形成のメカニズムを免疫学的に検討した。【方法】手術類似侵襲として、各種マウスから5mmの腹部正中切開にて体外に取り出した盲腸にバイポーラ電気メスを用いて1秒焼灼後、速やかに閉創した。術後経時的に開腹し、癒着形成をadhesion score(1-5)で評価した。【結果】1) 術後経時的に癒着形成が進行し、1週間でマウスの盲腸は著明な癒着を形成した。2)CD4+T細胞を除去したマウスに同様の侵襲を加えても癒着は極軽度であった。3) CD4+T細胞の中でinvariant (i) NKT細胞を欠損するja18 KOマウスでは癒着形成は極軽度であった。4)術後早期に腸管組織にIFN-γ発現を認めた。5) IFN-γ KOマウスに同様の侵襲を加えると癒着は極軽度であった。一方、このマウスにIFN-γを投与すると著明な癒着を形成した。6) ja18欠損マウスに野生型マウス由来のCD4+T細胞を移入すると著明な癒着を形成したが、IFN-γ KOマウス由来のCD4+T細胞を移入すると癒着は軽度であった。 【考察】腹腔内手術に伴う癒着形成はiNKT細胞由来のIFN-γが重要な役割を演じる事が示唆された。我々の樹立したマウス腹腔内癒着モデルは、術後癒着形成のメカニズムの解明とその治療・予防的処置の開発に極めて有効と考えられる。