主催: 大阪大学保健センター、大学院医学系研究科身体防御健康医学
Foxp3陽性制御性T細胞(Treg)の量的、質的異常が多くの自己免疫疾患の背景に存在することが明らかとなりつつある中で、全身性エリテマトーデス(SLE)におけるTreg動態については不明な点が多く残されているのが現状である。我々は、加齢に伴ってヒトSLEに酷似した症状を呈する(NZB x W)F1(BWF1)マウスを用いて、その病態形成過程におけるTregの解析を行った。予想に反して、ループス腎炎発症後のBWF1マウスでは、in vitroで正常な抑制能を示すFoxp3陽性Tregが発症前のマウスに比して増加していた。さらに、B細胞濾胞内およびその近傍に局在することや表面分子の発現パターンから、加齢BWF1マウスのTregは高い活性化状態にあることが示唆された。一方、BWF1マウスの病態形成にはB1細胞が重要な役割を果たすことが知られており、我々は過去にB1細胞が自己反応性CD4陽性T細胞を活性化する可能性を見出している。最近の研究からTregも自己反応性T細胞集団であると考えられるため、この視点からB1細胞によるCD4陽性T細胞への影響をさらに解析したところ、B1細胞によって活性化されたCD4陽性T細胞の一部がFoxp3を発現することが明らかとなった。以上より、ループス腎炎発症後のBWF1マウスにおけるTregの増加に、B1細胞が関与する可能性が示唆された。