クローン病(CD)は10代後半から20歳代に好発する原因不明の慢性炎症性腸疾患で、本邦でも患者数は増加傾向にある。原因として遺伝因子や環境因子が絡み合い、免疫学的異常を生じて発症する多因子疾患と考えられている。現在までにNOD2、OCTN、DLG5、TNFSF15、IL-23Rなどの疾患感受性遺伝子が同定された。特に細胞内病原体認識分子であるNOD2遺伝子の変異がCD発症と相関することが報告されて以来、これまでの獲得免疫機構の研究に加えて遺伝的背景と自然免疫との関連が注目されるようになった。CDモデルとして用いられるIL-10欠損マウスや他の多くの腸炎自然発症マウスでは、腸内細菌の存在が腸炎発症に必要である事実も自然免疫の関与を示唆している。免疫学的異常についてはTh1優位の免疫異常が存在することが判明している。我々も、CDではマクロファージからのIL-18の産生が亢進していること、腸管粘膜固有層単核球からのIFN-g産生が亢進していることを報告している。しかし、腸管局所での自然免疫と獲得免疫のcross talkについてはこれまで未解明であった。我々は腸管局所マクロファージが腸内細菌認識において恒常性維持に重要な働きをしていること、さらにIL-10欠損マウスではこの腸管マクロファージの細菌認識機構の異常により、細菌刺激に対しIL-12およびIL-23が過剰産生されることを見出した。CDにおける腸管マクロファージの機能異常についても、CDの腸管マクロファージは腸内細菌刺激に対し過剰なIL-23を産生することを突き止めた。このIL-23はT細胞やNK細胞からのIFN-g産生を促し、Th1への過剰なシフトを引き起こしていると考えられる。このようにマウスモデルやCDでは、腸内細菌に対するマクロファージの異常応答がTh1/Th17型の免疫応答を誘導し腸炎発症に関与していると考えられ、この異常反応の制御が新たな治療ターゲットになりうると思われる。