近畿理学療法学術大会
第50回近畿理学療法学術大会
セッションID: 24
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要支援女性に対する質問紙法での尿失禁評価についての検討
*銭谷 敦子宇都宮 理沙中村 紀子丸山 真司佐々木 昌平(OT)楠本 剛(OT)山本 智加子三木 香苗鍋嶋 崇之
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キーワード: 尿失禁, 要支援者, 質問紙
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抄録

【目的】 尿失禁の基本的評価項目は、病歴・診察・残尿・尿検査であるが、十分な問診により70%程度の患者で尿失禁タイプの診断が得られるとも言われている。尿失禁はQOL疾患であるため、自覚症状やQOLの評価が重要という点でも質問紙法の役割は大きい。 老人保健施設等の介護保険サービスにおいて理学療法士が尿失禁の実態調査・評価を行う場合には資格・技術・設備等の面により自覚症状・QOLの評価が中心となる。しかし、介護保険利用者では認知機能に障害を持つ場合が多く、正確な回答を得ることは容易ではない。よって、介護予防サービスの対象となる要支援(1又は2)者において、級内相関係数を用いて検討した。 【方法】 当院併設老人保健施設にて予防介護通所リハビリテーション利用中の女性22名{平均年齢83.5±6.41歳、Mini-Mental State Examination(以下MMSE) 24.68±3.87点}を対象とした。除外規定を視覚障害・上肢機能障害等により書字が困難な者としたが、該当者はいなかった。 質問紙は女性の尿失禁において信頼性と妥当性のある国際前立腺スコア(以下I-PSS)を用い、参加者が質問文を読んで自己記載にて回答することとした。1回目と2回目に7~11日の間隔を設けた再テスト法を実施した。統計処理は1回目と2回目の信頼性について級内相関係数を用いた。また、回収した質問紙で有効回答者と欠損回答及び不適切回答者間の年齢及びMMSEについてt検定を用い比較分析した。有意水準は危険率5%未満とした。 【説明と同意】 参加者全員に口頭及び紙面にて研究の方法を参加者に説明し、書面での同意を得た。また、女性に対しての尿失禁評価であることからプライバシーにも配慮した。 【結果】 回答者22名のうち欠損回答及び不適切回答者が10名、参加中断者2名(体調不良による)で、有効回答率は45.5%であった。有効回答者と欠損回答及び不適切回答者の平均年齢は、それぞれ84.0±4.00歳と82.8±8.50歳、MMSEの平均点は24.0±3.02点と26.1±3.81点であり各項目に有意な差はなかった(P=0.69、P=0.18)。次に有効回答者のI-PSS平均値は1回目が5.30±5.48点、2回目は4.60±5.10点で級内相関係数R=0.97の強い相関がみられた。 【考察】 本研究結果により、尿失禁に関する質問紙法は有効回答者に対して高い信頼性が示された。これはI-PSSの信頼性が高いことと一致している。質問紙法は検査者が非介入であれば回答内容への影響を防ぐことが可能であり、また、検査者と直接関わらないためプライバシーにかかわる質問もある程度可能である。よって自己の尊厳に深く関わる尿失禁の評価において有用な手段と言える。しかし、今回得られた回答においては欠損回答及び不適切回答者が50%存在し、質問紙回収の際に理学療法士による結果の確認作業が必要であることも示唆された。今後は、サンプル数を増やすとともに測定項目を検討していきたい。 【理学療法研究としての意義】 尿失禁に対する理学療法介入は少ないのが現状である。しかし、今後ますます介護予防分野での理学療法へのニーズは高まってくる。理学療法士が尿失禁の評価を行う場合には質問紙等からの情報収集の割合が高いため、要支援者を対象とした場合に評価方法を考慮する必要があると考えられる。

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© 2010 社団法人 日本理学療法士協会 近畿ブロック
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