近畿理学療法学術大会
第48回近畿理学療法学術大会
セッションID: 6
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身体位置認識と転倒歴の関係
*川崎 翼森岡 周
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抄録

【はじめに】  高齢者のADL維持・拡大のために転倒予防対策は重要事項である.一般的に転倒は内的要因と外的要因に分けられ,内的要因の一つとして固有感覚が挙げられている.固有感覚とバランス感覚との関連性についての研究は散見され,多くは膝関節の固有感覚(位置覚)との関係が示唆されているが,関節間の空間的な位置関係とバランス能力の関係性を示した報告は見当たらない.そこで,我々は本研究の前段階調査で,身体位置認識と立位バランス能力の相関性を明らかにした.今回,臨床研究として,身体位置認識と転倒歴の有無の関係性を明らかにし,転倒要因の一つの因子としての可能性を検討した.
【対象と方法】  対象は60~86歳(平均年齢74.8±10.2歳)の中枢性疾患を有さず,HDS-Rで正常と判断された20名(過去一年以内に転倒歴有り10名,転倒歴無し10名)とした.  身体位置関係認識の誤差測定の基本肢位は,壁に後頭部,肩甲骨,殿部,踵部が接触した立位で他動的に測定肢である一側下肢を挙上(股関節屈曲40度,膝関節屈曲50度)し,足底に15cmの台を置いた安定した立位とした.基本肢位にて外果,大転子間の距離を認識するように指示し,5秒後メジャーを用いて距離を両示指にて示させた.示す際,視覚的フィードバックを用いるがメジャーの目盛は参照されないよう配慮した.その後,検者はメジャーを用いて実際の距離を測り誤差を検出した.この誤差を本研究における身体位置認識の誤差とし,転倒歴の有無で平均値,中央値に差があるかをT検定,Mann WhitneyのU検定を用いて検討した.統計学的有意水準は5_%_未満とした.
【結果】  身体位置認識の誤差は転倒歴有り群と無し群間でスチューデントのt検定において有意な差が見られた(p<0.01).又,Mann-WhitneyのU検定においても有意な差が見られた (p<0.01).
【考察】  結果から,転倒歴の有無により身体位置認識に差があることが示された.McCormick1)は立位バランス制御には空間における各体節間の位置関係を正確に認識することが必要である.又,身体の位置関係認識の異常は運動表出のためのフィードバックを不的確にさせると共に,脳内の筋骨格系制御のための内部モデルの正確性を失う可能性があると述べている.この事から姿勢制御に必要な身体位置認識のフィードバックを不正確にする事が転倒歴の有無に影響を及ぼしたと考えられた.立位バランス能力・転倒に影響する因子として身体位置認識も転倒に関与することが示唆された.今後,臨床で用いられているバランステストとの関連性を明らかにし,臨床におけるバランス能力の指標となりうるか検討していきたい.
【文献】 1)McCormick:Faulty proprioceptive information disrupts motor imagery:an experimental study.Australian Journal of Physiotherapy,2007,53:41-45.

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© 2008 社団法人 日本理学療法士協会 近畿ブロック
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