近畿理学療法学術大会
第48回近畿理学療法学術大会
セッションID: 59
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人工関節置換術後患者の術前の運動機能が術後の杖歩行獲得に要する期間に及ぼす影響
-人工股関節と人工膝関節の比較-
*西川 徹南角 学宮坂 淳介中村 孝志
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抄録

【はじめに】人工関節置換術後の術後において,日常診療の効率化や入院日数の短縮のため多くの施設でクリニカルパスが導入されている。当院においても,人工関節置換術後3~4週を退院としたクリニカルパスを用いており,術後のリハビリテーションを円滑に実施する上で術前から術後経過を予測することは重要である。しかし、術前の運動機能と術後経過との関連性を検討した報告は少なく不明な点が多い。本研究の目的は、人工膝関節置換術(TKA)、人工股関節置換術(THA)施行患者の術前の運動機能が術後の杖歩行獲得に要する期間に及ぼす影響を検討することである。
【対象】変形性膝関節症によりTKAを施行された女性21名(平均年齢76.0±6.2歳:以下、TKA群)、変形性股関節症によりTHAを施行された女性24名(平均年齢57.9±8.5歳:以下、THA群)を対象とした。各対象者には本研究の趣旨と目的を説明し、同意を得た。
【方法】運動機能の評価として、術前の歩行能力と手術予定側の膝伸展筋力を評価した。術前の歩行能力は、10m歩行時間とTimed up and go test(TUG)を測定した。膝伸展筋力は、Isoforce GT-330(OG技研社製)を用いて屈曲60°位にて等尺性筋力を測定し、トルク体重比(Nm/kg)を算出した。また、術後に杖歩行の獲得までに要した日数を調べた。術前の運動機能と杖歩行獲得までに要した期間との関連性の検討には、Pearsonの相関係数、TKAとTHAの杖歩行獲得期間の比較には対応のないt検定を用い、統計学的有意水準は危険率5_%_未満とした。
【結果と考察】TKA群の術前の運動機能は、10m歩行時間は11.9±2.8秒、TUGは12.6±4.1秒、膝伸展筋力は1.05±0.34Nm/kgであった。THA群の10m歩行時間は8.4±3.1秒、TUGは9.4±4.2秒、膝伸展筋力は1.57±0.50Nm/kgであった。杖歩行獲得までに要した期間は、TKA群は17.4±6.3日、THA群は12.5±4.5日であり、TKA群はTHA群と比較して有意に遅い値であった(p<0.005)。また、TKA群に関しては、術前の運動機能と杖歩行獲得までに要した期間に有意な相関関係は認められなかった。THA群に関しては、術前の運動機能と杖歩行獲得までに要した期間に有意な相関関係を認め、相関係数は10m歩行時間でr=0.66、TUGでr=0.71、膝伸展筋力はr=-0.60であった。以上から、THA群では術前の運動機能と杖歩行獲得までに要した期間に有意な相関関係を認めたことから、THA施行後おいては、術前の歩行能力と膝伸展筋力は術後経過を予測する上で有用な指標であると考えられる。一方、TKA施行後においては、術前の運動機能は術後の杖歩行獲得までの日数と関連しないことが明らかとなった。

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© 2008 社団法人 日本理学療法士協会 近畿ブロック
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