近畿理学療法学術大会
第48回近畿理学療法学術大会
セッションID: 58
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人工股関節全置換術後の運動連鎖障害に対する早期アプローチ
*森本 剛史松島 哲弥餅越 竜也寅屋敷 江里子
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抄録

【はじめに】
 変形性股関節症(股OA)に対する人工股関節全置換術(THA)後の治療について、先行研究においても股関節―骨盤―脊椎の運動連鎖機能障害へのアプローチが効果的であるという結果は認められている。しかし、上記アプローチがTHA後患者の早期歩行に対し、どのような影響を与えているのかについての研究は少ない。そのため今回の研究で当院における3週間のクリニカルパスの中で、運動連鎖機能障害へのアプローチの術後早期歩行に対する有効性を検討した。

【Key Word】  変形性股関節症、cadence、運動連鎖機能障害

【対象】
 股OAにてTHAを受けた22名をA群とB群に無作為に分け、A群9名(平均年齢61.22歳 男性1名、女性8名)、B群13名(平均年齢60.0歳 女性13名)を対象とした。術側下肢は右11名、左12名、日本整形外科学会変形性股関節症X線評価にて初期2名、進行期5名、末期15名であった。すべての被検者には本研究の趣旨を説明し同意が得られた。

【方法】
 A群は術後、徒手療法(圧迫、摩擦などの物理的刺激を筋に与える)、関節可動域訓練、筋力増強、歩行訓練などを中心とした理学療法を行った。B群はA群の訓練内容に加え10m杖歩行が可能となった後より、運動連鎖機能障害に対する運動療法を行った。治療時間を10分間とし、1週間行った。両群共に治療後に10m歩行(前後2m加え、最大14mを最大努力歩行とする)のcadenceを測定した。統計学的検討にはt検定を用い、有意水準5_%_未満とした。

【結果】
 各々の群において、歩数、速度、cadenceに有意な差は認められなかった。また、術後処女歩行と1週間後の歩行時の歩数、速度、cadenceの変化率においても有意な差は認められなかった。しかし、歩数は減少し、歩容もDuchenne歩行に対し改善する傾向が認められた。  

【考察】
 今回の研究で術後早期より股関節―骨盤―脊椎の運動連鎖機能障害に対し運動療法を行った結果、静的な場面では股関節―骨盤―脊椎のアライメントの改善は認められたが、歩数、速度、cadenceにおいて両群に違いが見られないことが示唆された。これは術後早期には疼痛性跛行や筋力低下が存在し、さらに術前からの運動学習による異常歩容の定着や、股関節―骨盤―脊椎の構築学的変化の影響もあることから、術後3週間という短期間での治療効果が得られにくかったのではないかと考える。そのため今後は、術前から異常歩容に対して股関節―骨盤―脊椎のアプローチを自主トレーニングとして指導することや、退院後の経過観察など長期にわたっての対応が必要であり、そうすることで再運動学習が期待できると考える。

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© 2008 社団法人 日本理学療法士協会 近畿ブロック
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