近畿理学療法学術大会
第48回近畿理学療法学術大会
セッションID: 44
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脳卒中片麻痺患者に対するTrunk Impairment Scale(TIS)の信頼性・妥当性の検討
*岩佐 太一嶋田 智明
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キーワード: 体幹, 評価法, 脳卒中片麻痺
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抄録

【研究の背景・目的】
Trunk Impairment Scale(TIS)はVerheydenらが2004年に発表した脳卒中片麻痺患者のための座位バランスに着目した体幹運動機能評価法であり、我々は原本の表現をなるべく変更しないようにTISを翻訳した。TISは静的バランス・動的バランス・協調運動のカテゴリーがあり、23点満点で高得点ほど機能がより良いとされる。しかし、項目の中には曖昧な評価基準のものが含まれていたため我々はTISの信頼性を検討する必要があると考えた。また体幹運動機能が基本動作と深い関係にあることやTISが座位バランスに着目した評価法であることから、Modified Motor Assessment Scale(M-MAS)やFunctional Reach Test(FRT)との相関関係から、併せてTISの妥当性を検討した。
【方法】
対象はデイサービスに通う脳血管障害による片麻痺患者28名(男性18名、女性10名)とした。この対象者に対するTISによる評価の様子をVTRに録画し、複数の検者に同一条件で評価させた。検者内信頼性では16名分のVTR を1名の理学療法士(PT)に2回評価させ、その結果から合計得点と各カテゴリーの級内相関係数(ICC)、各項目のkappa係数(k係数)を求めた。検者間信頼性では10名分のVTRを4名のPT(経験年数5年未満)に同一条件で評価させ、その結果からICC、 k係数を求めた。また妥当性では28名を対象にTISとM-MAS、FRTを測定しスピアマン順位相関係数を求めた。
【結果】
検者内信頼性では合計得点のICCは0.94、各カテゴリーのICCは0.70~0.96。各項目のk係数の評価はModerate~Almost perfectであった。検者間信頼性では合計得点のICCは0.88、各カテゴリーのICCは0.33~0.87。各項目のk係数の評価は動的バランスの一部にPoorやFairの項目があったことを除いてはModerate~Substantialであった。妥当性ではTISとM-MASの間にはrs=0.78、TISとFRTの間にはrs=0.70とそれぞれ有意な相関が認められた(p<0.01)。
【考察】
TISの合計得点のICCは検者内、検者間それぞれ0.94と0.88であり、検者内・検者間ともに高い信頼性を有しているように思われた。しかし動的バランスの項目には検者間信頼性の低いものがみられた。これは今回評価を行ったPTそれぞれの評価基準が異なっていたため検者間信頼性が低い結果になったためと考えられた。そのため検査者の評価基準を均一化するための細かなマニュアルを作成する必要があると思われる。一方、TISはM-MASおよびFRTとの密接な関係が示され、座位バランスに着目した体幹運動機能評価法としての妥当性が確認された。
【まとめ】
TISの信頼性・妥当性を検討した結果、合計得点には検者内・検者間信頼性があり、パフォーマンススケール、バランススケールとの間に相関関係を認めたことから、有用性のある評価法であることが確認された。しかし、いくつかの項目ではより細かなマニュアルを作成する必要があることが示唆された。

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© 2008 社団法人 日本理学療法士協会 近畿ブロック
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