近畿理学療法学術大会
第48回近畿理学療法学術大会
セッションID: 34
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脳血管障害片麻痺患者の痙縮および筋短縮に関する誘発筋電図による検討
―H波、F波の出現様式とM波を指標として―
*鈴木 俊明米田 浩久谷埜 予士次高崎 恭輔鬼形 周恵子塩見 紀子谷 万喜子
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抄録

【目的】我々は、脳血管障害片麻痺患者の痙縮を誘発筋電図で検討し、脊髄神経機能の興奮性の指標であるH波、F波の出現様式は筋緊張、深部腱反射の程度と相関し、痙縮の評価となると結論した。しかし近年、痙縮筋の不動による筋短縮が痙縮の程度を増大させると報告され、我々の研究結果は痙縮および筋短縮を含んでいた。臨床で「筋緊張」と表現される要素が痙縮か筋短縮かを区別するには、筋機能を示すM波も同時に評価すると良いと考える。本研究では、神経学的所見と脳血管障害片麻痺患者のH波、F波の出現様式および最大M波振幅より、誘発筋電図検査で筋緊張亢進の要因を判別できるか否か検討した。
【方法】対象は、本研究に同意した脳梗塞患者4名(男性1名、女性3名)、平均年齢57.8歳(48~68歳)、平均罹病期間40ヶ月(23~61ヶ月)で、右片麻痺1名、左片麻痺3名である。今回の対象は、検査筋である母指球筋の臨床症状(筋緊張、筋短縮)の程度が他の上肢筋の臨床所見と乖離していない症例とした。神経学的所見は、母指球筋の筋緊張検査として母指最大内転より最大外転に伸張した場合のアシュワーススケール(変法)で評価し、この時の抵抗感で筋短縮の有無も評価した。筋短縮の判定は、筋伸張の最終可動域で明らかな抵抗を認める場合とした。また、上肢の深部腱反射を総合的に評価した。次に、背臥位で正中神経を手関節部で刺激した際の誘発筋電図を母指球筋より記録し、刺激強度を0mAより経時的に増加させてH波、F波の出現様式を検討した。出現様式は、我々の先行研究と同様に4つのタイプに分類した。タイプ1は、刺激強度の増加によりH波は認めずにF波が出現する。タイプ2は、刺激強度の増加によりH波が出現し、その後H波が消失しF波が出現する。タイプ3は、刺激強度の増加に伴いH波が出現し、その後H波波形のなかにF波が出現する。タイプ4は、刺激強度の増加に伴いH波が出現し、F波は出現しない。また、麻痺側、非麻痺側の最大M波振幅を計測した。
【結果】4症例のうち、母指球筋の筋短縮を認めなかった2名の深部腱反射は中等度亢進、アシュワース・スケール(変法)は2であった。H波、F波の出現様式は、麻痺側はタイプ3もしくは4、非麻痺側はタイプ2であった。最大M波は両側で変化を認めなかった。母指球筋の筋短縮を認めた2名は、深部腱反射は軽度亢進もしくは中等度亢進、アシュワース・スケール(変法)は3であった。H波、F波の出現様式は、麻痺側はタイプ4、非麻痺側はタイプ2であった。最大M波は麻痺側で低下を認めた。
【考察およびまとめ】今回の4症例は、神経学的所見、H波、F波の出現様式、神経症状には大きな差異を認めなかった。しかし、筋短縮を認めた2症例は麻痺側で最大M波の低下を認め、H波、F波出現様式と最大M波振幅を併せて評価することで、痙縮と筋短縮の要因を区別できると考える。

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© 2008 社団法人 日本理学療法士協会 近畿ブロック
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