近畿理学療法学術大会
第48回近畿理学療法学術大会
セッションID: 32
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高齢者の平衡機能訓練についての一考
*瀬戸口 大介中川 法一山本 昌樹
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抄録

【はじめに】
高齢者の身体能力低下の一つとして重心動揺の増大があるが、その立位バランスのアプローチとしてバランスボードや、個別の筋力増強トレーニングなどが一般的に行われている。一方足底圧刺激を増加させることにより重心動揺が減少したとの報告もある。今回、従来行われている感覚刺激トレーニングに加え、入力した感覚量の識別の誤差を言語的なフィードバックにて再学習させ、重心動揺にどのように影響を及ぼすかを検討した。
【方法】
対象者はケアホーム在住の厚生労働省自立度判定基準Aランク以上である65歳以上の高齢者40名で内訳は女性36名、男性4名で平均年齢80.3±5.2歳の被験者を3つのグループに分けた。3つのグループを、硬度の違うスポンジゴムを踏ませ、どの硬度か被験者に回答させ言語によるフィードバックを与えた学習群が13名、学習群と同様にスポンジを踏ませるが回答させない非学習群13名とコントロール群14名の三つの群に分け比較検討した。測定肢位は閉眼にてスポンジ上での立位とし、異なる硬さの5つのスポンジを5回ランダムに入れ換え、何れの硬さであるかを被検者に回答させ、正解は直後に与え学習させた。30秒の休憩後、同様に10回測定を行いこの時は正解を与えず、正解率をトレーニングの学習効果とした。これらを2週間合計10回行った。また、重心動揺値は実験前後にアニマ社製重心動揺計にて測定し、測定項目としては総軌跡値、外周面積について検討し、統計処理はt検定を使用した。なお、初回時の3群間には有意な差は認められなかった。
【結果】
学習群における硬度識別トレーニングの正解率は1名の被験者を除き、回数を重ねるにつれ有意に増加した(p<0.05)。重心動揺値は、学習群において開眼、閉眼ともに2週後の総軌跡長、外周面積は初回と比較した結果、有意に減少した(p<0.05)。しかし非学習群及びコントロール群においては有意な減少は認められなかった。
【考察】
重心動揺が減少した要因としては、視覚を遮断し、足底感覚(体性感覚)に注意を向けさせたトレーニングをし、また識別課題の正誤を言語的なフィードバックを与える事でよりいっそう意識を足底に加わる触圧覚に対して向けさせたためであると思われる。その結果、体性感覚情報と視覚情報のフィードバック機構が円滑に行われ、学習群において重心動揺を減少させる結果となったのではないかと思われる。これらより、転倒予防においては量的な訓練に加え、こういった質的な訓練も一つの方法として用いられるのではないかと思われる。

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© 2008 社団法人 日本理学療法士協会 近畿ブロック
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