近畿理学療法学術大会
第48回近畿理学療法学術大会
セッションID: 22
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腹筋群筋厚が立位時の骨盤傾斜角度に与える影響
*和田 治建内 宏重太田 恵池添 冬芽市橋 則明
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抄録

【目的】近年、超音波画像診断装置を用いた腹筋群の筋厚に関する報告は多い。また、腹筋群は骨盤に直接付着するため、立位骨盤アライメントに影響を及ぼすことが予想される。しかしながら、腹筋群の筋厚と立位骨盤アライメントの関連について検討した報告は見当たらない。本研究の目的は、腹筋群筋厚が、両脚および片脚立位での骨盤アライメントに与える影響を検討することである。 

【方法】研究に対して同意の得られた健常若年女性26名(年齢20.0±0.9歳)を対象とした。腹筋群筋厚は,超音波画像診断装置を用いて,右側の腹直筋・外腹斜筋・内腹斜筋・腹横筋を測定した。筋厚の測定は背臥位で行い、腹直筋は臍から4cm外側の部位で、外腹斜筋・内腹斜筋・腹横筋は臍周囲上の腋窩線から2.5cm内側の部位で測定した。骨盤傾斜角度を測定するために、上前腸骨棘と上後腸骨棘にマーカーを添付し、デジタルカメラで矢状面より撮影した。測定した画像より、画像解析ソフト(scion image)を用いて、両マーカーを結ぶ線の傾きを骨盤傾斜角度(矢状面)として求めた。立位骨盤アライメントは、両脚および右片脚立位での骨盤傾斜角度、および両脚から片脚へ移行した際の骨盤傾斜変化量(前傾方向+)を測定した。なお、画像解析は右矢状面を対象とした。統計処理は統計ソフトSPSS12.0J for windowsを用い、腹筋群筋厚と、両脚および片脚立位での骨盤アライメント・骨盤傾斜変化量との相関分析を有意水準を5%として行った(ピアソンの相関係数)。

【結果】両脚立位での骨盤傾斜角度(平均12.0±3.8゜)は、全ての腹筋群と有意な相関を示さなかった(r=0.08~0.25 )。また、片脚立位での骨盤傾斜角度(平均12.5±4.7゜)とも全ての腹筋群は有意な相関を示さなかった(r=-0.05~-0.28 )。両脚から片脚へ移行した時の骨盤傾斜変化量と、腹直筋(r =-0.442 p=0.02)・外腹斜筋(r =-0.480 p=0.01)・腹横筋(r =-0.498 p<0.01)は有意な負の相関を認め、これらの筋厚が厚いほど骨盤傾斜変化量は小さくなる傾向がみられた。内腹斜筋(r =-0.366 p=0.07)も有意では無いが、同様の傾向を示した。

【考察】両脚および片脚立位での骨盤傾斜角度と全ての腹筋群は有意な相関を示さなかった。これは骨盤傾斜角度が、腹筋群の筋厚ではなく、他の要因により影響されている可能性が高いためだと考えられる。しかし、骨盤傾斜変化量と腹直筋・外腹斜筋・腹横筋は有意な相関を示し、内腹斜筋も同様の傾向を示した。これは両脚から片脚へ移行する際に、骨盤の固定筋として腹筋群が働き、骨盤の前傾を制御したものと考えられる。

【まとめ】:腹筋群筋厚は、両脚および片脚立位での骨盤アライメントよりも、両脚立位から片脚立位時への骨盤傾斜変化量に影響を与える可能性が示唆された。

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© 2008 社団法人 日本理学療法士協会 近畿ブロック
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