近畿理学療法学術大会
第48回近畿理学療法学術大会
セッションID: 20
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立位での一側下肢への荷重時における体幹前傾に伴う股関節屈曲角度の変化が支持側股関節外転筋群の筋電図積分値に与える影響
*池田 幸司藤本 将志渡邊 裕文大沼 俊博赤松 圭介安井 重男鈴木 俊明
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抄録

【はじめに】
 股関節外転筋群の筋力低下で、歩行時にトレンデレンブルグ徴候が生じることがある。臨床にてトレンデレンブルグ徴候を評価すると、立脚初期や立脚中期から後期にかけて生じるなどそのパターンは多様である。正常歩行にて立脚側股関節では運動が絶えず生じていることから、荷重時での股関節肢位の変化による荷重側股関節外転筋群の筋活動の変化について検討が必要と考えた。そこで今回、一側下肢への荷重時における体幹前傾に伴う股関節屈曲角度の変化が荷重側股関節外転筋群の筋電図積分値に与える影響について表面筋電図を用いて検討したので報告する。
【対象と方法】
 対象は健常男性7名とし、平均年齢は29.3歳であった。まず両足底を接地させたまま側方へ体重移動させ、一側下肢へ体重の95_%_を荷重した状態を開始肢位とした。この時、筋電計ニューロパック(日本光電社製)を用いて荷重側大腿筋膜張筋・中殿筋・大殿筋上部線維の筋電図を5秒間、3回測定した。次に開始肢位での股関節角度を屈曲0度位とし、そこから体幹前傾に伴う股関節屈曲角度を5度、10度、15度、20度、25度位と変化させ、各課題の筋電図を同様に測定した。測定時の各課題における荷重側足底の前後荷重量は、開始肢位と同様となるように規定した。そして各課題では、体幹・骨盤の回旋と側方傾斜はさせず、体幹については屈曲・伸展中間位とした。さらに両膝関節は測定中屈曲を起こさないよう指示した。また本課題において体幹前傾に伴う殿部の後方への変位は許可した。なお被験者には本研究の趣旨を説明し同意を得た。
【結果と考察】
 本課題における股関節屈曲角度の増大に伴い、荷重側大腿筋膜張筋と中殿筋の筋電図積分値は減少を認め、荷重側大殿筋上部線維の筋電図積分値は増加をした。諸家らによると大腿筋膜張筋と中殿筋(股関節の中心に対して前方の線維)は股関節の屈曲に関与すると報告している。本課題では股関節屈曲角度の増大に伴い股関節には従重力方向へ屈曲しようとする力が増加すると考えられる。これに伴い大腿筋膜張筋と中殿筋は股関節の屈曲作用としての関与が低下し、筋電図積分値に減少を認めたと考える。また大殿筋上部線維については股関節屈曲角度の増大に伴い、股関節伸展作用がより必要となるため筋電図積分値に増加を認めたと考える。また本課題については一側下肢への荷重量を常に体重の95_%_となるよう規定していることから、荷重側股関節外転筋群は骨盤が非荷重側へ下制しようとする力に対し、これを制動するために股関節外転作用として関与していることが考えられる。今回の結果より股関節屈曲角度の増大に伴い股関節外転筋である大腿筋膜張筋と中殿筋の筋電図積分値は減少し、大殿筋上部線維の筋電図積分値については増加していることから、骨盤の非荷重側への下制に対する制動についてはとくに大殿筋上部線維がより関与したと考えられる。

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© 2008 社団法人 日本理学療法士協会 近畿ブロック
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