近畿理学療法学術大会
第48回近畿理学療法学術大会
セッションID: 15
会議情報

片脚立位での一側下肢の運動が対側の支持脚における足底圧中心位置と足部周囲筋群に与える影響
-支持脚の膝関節屈曲位での検討-
*山口 剛司高崎 恭輔大工谷 新一鈴木 俊明
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キーワード: 筋電図, COP, 足部周囲筋群
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抄録

【はじめに】
我々は第47回本学会において、片脚立位での一側下肢の運動課題時に生じる支持脚足部内のCOP変化と足部周囲筋群の筋活動について報告した。その結果からは、COP小趾側移動中は下腿外側傾斜を制動する目的で後脛骨筋が活動し、COP母趾側移動中は下腿内側傾斜を制動する目的で腓骨筋と足趾伸筋が活動することがわかった。このことより本研究の運動課題は、足部機能の低下した症例に対する閉鎖性運動連鎖でのエクササイズとして有用であると考えられた。今回は、実際の動作場面に多い立位からの踏み込み動作やサイドステップからの切り返し動作時における足部機能の改善を目的としたエクササイズを想定し、同運動課題時での支持脚COPと足部周囲筋群の筋電図評価を実施した。
【対象と方法】
対象は本研究の主旨に同意を得た整形外科的、神経学的に問題のない健常者男女11名の利き脚側(以下、支持脚)11肢とした。  方法は、被験者に重心動揺計のプレート上で支持脚の片脚立位をとらせた。支持脚の規定は、股・膝関節を30゜屈曲位とした。筋電図は支持脚の腓骨筋、後脛骨筋、前脛骨筋、足趾伸筋、半膜様筋、大腿二頭筋を記録した。運動課題は、立位姿勢の状態から非利き足側(以下、運動側)下肢の足底が接地しないよう前方で空間保持した状態を開始肢位とした。この肢位から運動側股関節を内転する課題を内側運動、外転する運動を外側運動とした。運動課題は、体幹・骨盤の回旋運動を最小限にし、両肩峰を水平に保持させた。運動距離は、上記の規定内で各被検者が最大に移動できる距離とした。なお下肢の運動と筋電図波形、COP記録を同期させるために、自作のフットスイッチを運動側の母趾と小趾に配置した。運動課題は、開始肢位より内側運動から行い、外側・内側の3回の接触で1施行とし3施行測定した。 分析方法は、運動課題中のCOP軌跡の時間的変化とそれに伴う導出筋の筋活動のパターンを分析した。
【結果】
運動課題中のCOP変化は、内側運動課題中は小趾側方向へ移動し、外側運動課題中は母趾側へ移動した。またCOPの切り換えと運動の切り換えは、同時期に起こるのみでなく、各個体内において多様性がみられた。一方、筋活動はCOPの多様性とは相関せず、COPの移動方向との間に一定の傾向が見られた。具体的には、COP小趾側移動中は後脛骨筋と半膜様筋の筋活動が増加し、COP母趾側移動中は腓骨筋、足趾伸筋と大腿二頭筋の筋活動が増加した。
【考察】
COP小趾側移動中の半膜様筋の筋活動は、下腿外側傾斜により生じる膝関節の内旋運動を誘導すると考えられ、C0P母趾側移動中の大腿二頭筋の筋活動は、下腿内側傾斜により生じる膝関節の外旋運動を誘導すると考えられる。本研究の運動課題は、安定した姿勢で実施することを前提に、足部周囲筋群および半膜様筋と大腿二頭筋のエクササイズとして有用であると考えられる。

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© 2008 社団法人 日本理学療法士協会 近畿ブロック
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