近畿理学療法学術大会
第47回近畿理学療法学術大会
セッションID: 84
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座位での体幹回旋が呼吸機能におよぼす影響について
‐肺活量と胸郭拡張差による検討‐
*石崎 裕也渡邊 裕文蔦谷 星子大沼 俊博三好 裕子赤松 圭介藤本 将志中道 哲朗鈴木 俊明
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抄録

【はじめに】臨床上、整形疾患患者や脳血管疾患患者の歩行や立位および座位姿勢において、体幹部の機能障害により体幹が屈曲・回旋・側屈位を呈している症例を多く認める。我々はこのような肢位での活動において易疲労性や胸郭可動域制限、さらに呼吸数の増加などを認める患者の治療を経験した。近年の研究のなかで体幹屈曲位と呼吸機能についての報告は多くみられるが、体幹回旋位と呼吸機能の関連についての報告は少ない。そこで今回、座位での体幹回旋角度の増加による姿勢変化が、肺活量及び胸郭拡張差(剣状突起部・第10肋骨部)に与える影響について検討し、若干の知見を得たので報告する。<BR> 【対象と方法】対象は整形外科・神経学的に問題のない健常男性7名とした。肺活量測定には、スパイロメーターSPIROSIFT SP-450A (フクダ電子)を用いた。さらに胸郭拡張差は測定位置を剣状突起部、第10肋骨部とし、最大呼気時と最大吸気時の胸郭拡張差を測定した。測定肢位は、座位にて体幹回旋0°位を開始肢位とした。そこから10°間隔で体幹回旋を変化させ、回旋40°位まで実施し、各肢位にて肺活量と胸郭拡張差を測定した。これらの各測定肢位については、上肢を下垂位とし、さらに両肩峰を結んだ線が床面と平行になるよう規定した。また測定中は、可及的に体幹屈曲・伸展の動きや肩甲帯の挙上が起こらないよう練習し、測定は日をかえて3回実施した。なお、被験者には本研究の趣旨について十分な説明を行い、同意を得た。<BR> 【結果と考察】体幹の回旋角度の増加により、肺活量は減少傾向を認めた。さらに剣状突起部と第10肋骨部での胸郭拡張差においても同様に減少傾向を認めた。今回肺活量および胸郭拡張差が減少した理由として、Kapandjiは、胸椎を回旋させると、肋骨とくに肋軟骨の弾力性によって肋骨のねじれが生じると報告している。また、胸骨は、椎体の回旋に続くように動くとしている。これらのことから体幹回旋時に、胸郭を構成している肋骨や胸骨は変形すると考えられる。柿崎によると体幹にねじれがある場合、呼吸は偏りのある体幹姿勢に依存するため、呼吸筋のリラクゼーションは得られないとしている。さらに胸郭、腹部での十分な運動性は得られにくい可能性があるとし、臨床的に体幹の側屈や回旋により胸郭の形態が変形することで呼吸運動を制限するとしている。これらにより今回の体幹回旋位の増大は、胸郭の変形から呼吸運動により起こる胸郭の収縮・拡張を制限したと考えられ、肺活量及び剣状突起部や第10肋骨部の胸郭拡張差が減少したと考える。<BR>

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© 2007 社団法人 日本理学療法士協会近畿ブロック
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