近畿理学療法学術大会
第47回近畿理学療法学術大会
セッションID: 115
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画像解析ソフトImage Jの検者間信頼性
-立ち上がり動作を利用して-
*前岡 浩福本 貴彦坂口 顕長谷川 正哉金井 秀作高取 克彦冷水 誠庄本 康治
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抄録

【目的】
 理学療法士(以下PT)は日常の臨床において動作観察・分析を実施する。しかし,PT自身の経験や能力に大きく依存し,主観的評価に終わることが多い。
 一方,動作分析機器には三次元動作解析装置や電気角度計などがあげられるが,以前よりそれらの使用には費用や設備面など多くの問題が指摘されてきた。
 今日,根拠に基づく医療の提供が重要視され,理学療法分野でも客観的データを求められる場合が多い。そこで臨床現場におけるデータ収集の手段にImage Jというフリーウェアの使用を検討した。これは米国国立衛生研究所(以下NIH)が開発したNIH Imageの後継ソフトである。開発目的は顕微鏡画像解析から始まり,医学や生物学分野ではこれらを用いた報告が散見される。
 このImage Jには角度測定などの機能が多数含まれており,理学療法分野でも活用可能と考えた。しかし理学療法分野での適応を示した報告は少なく,信頼性等を検討した報告はない。
 よって今回,Image Jの検者間信頼性を立ち上がり動作の角度評価により検討したので報告する。
【方法】
 被験者(男性3名)及び検者(男性4名,女性6名)は本学学生とし,両者とも参加への同意を得た。
 デジタルビデオカメラ(以下DV)(sampling 30Hz)では,肩峰,大転子,膝関節外側関節裂隙に反射マーカーを貼付した立ち上がり動作を矢状面から撮影した。撮影画像はパーソナルコンピューター(以下PC)に取り込み,座位から立位までを抽出した。
 Image Jでの測定回数は1回とし,股関節を軸とした体幹傾斜角度を測定部位とした。各検者にはImage J操作手順の説明書を渡し,操作中にも適宜,口頭説明を加えた。
 統計学的解析は,最大体幹傾斜角度に対して級内相関係数(以下ICC)(2,1)及び標準誤差(以下SEM)を求めた。
【結果】
 検者間信頼性を示すICCは0.998,SEM(°)は被験者ごとに0.19,0.16,0.15となり,本研究では「優秀」を示した。
【考察】
 今回使用したImage Jはフリーウェアであり,入手は容易である。そしてDVやPCも一般的に普及した機器と考えられる。さらに,DVは場所を選ばず撮影可能であり,データ収集に大きな労力を要しない点では三次元動作解析装置などより優れている。
 今回の結果より,立ち上がり動作に関して,Image Jは使いやすいツールとしてだけでなく,検者間信頼性にも客観性を備えていることが確認され,臨床での評価,研究,教育においても有益なものと考える。
 今後は,測定条件や他の動作での測定,検者内信頼性等の検討の必要があると考える。
【まとめ】
 今回,立ち上がり動作を用いImage Jにおける検者間信頼性を検討した。結果は,高い信頼性が確認され,利便性を含め臨床においても有益な手段である可能性がある。

著者関連情報
© 2007 社団法人 日本理学療法士協会近畿ブロック
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