近畿理学療法学術大会
第47回近畿理学療法学術大会
セッションID: 108
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回復期リハビリテーション病棟における脳卒中患者に対するNSTのアウトカム
*松本 大輔帯刀 聖司芝山 伸男植村 真弓柳田 妙子栄 諭子新 章子山口 俊枝鮫島 奈穂西田 健吾立石 千尋平川 誠
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抄録

【目的】欧米に続き、わが国でも栄養サポートチーム(NST)が普及し、脳卒中患者に対する栄養管理の重要性が注目されてきている。急性期に果たすべきNSTの役割は確立しつつあるが、退院後の生活に直結する回復期での栄養管理に関しては、いまだ確立されていない。この度、当院でも2006年8月からNSTを立ち上げ、全患者対象に多職種による栄養アセスメントを実施している。そこで、栄養評価が退院時の日常生活自立度に関連性があるかを検討した。
【方法】2006年9月~2007年2月の間に当院回復期リハビリテーション病棟で入退院時の評価項目が計測可能であった脳卒中患者45名(男性 25名、女性 20名:平均年齢 73.9±9.7歳)を対象とし、後方視的に調査した。調査項目として、麻痺・褥瘡・経口摂取の有無、活動度は障害老人の日常生活自立度(自立度)、栄養評価はMini-Nutritional Assessment(MNA)のスクリーニング項目・血清アルブミン値(Alb)を用いた。また、身体組成は身長・体重・BMI・%標準体重に加え、上腕周囲長(AC)・上腕三頭筋皮下脂肪厚(TSF)・肩甲骨下部皮下脂肪厚(SSF)・下腿周囲長(CC)を麻痺側・非麻痺側ともに計測し、麻痺側の非麻痺側に対する比率(麻痺側比)を求めた。なお、上腕筋面積(AMA)も算出した。入院時評価項目と退院時の自立度との関連性を分析するために、各項目との相関はPearsonの相関係数を用いた。また、退院時の自立度に従い、J群(3名)、A群(8名)、B群(23名)、C群(11名)の4群に分け、Kraskal-Wallis検定を用いた。統計解析はSPSS12.0Jを用い、いずれも有意水準は5%未満とした。
【結果】Alb(r=0.54)、MNA(r=0.52)、経口摂取(r=0.46)、麻痺側AMA(r=0.46)、非麻痺側CC(r=0.43)の順で相関が認められた(p<0.01)。また、4群間で有意差が認められた入院時の評価項目として、自立度、Alb、MNA、麻痺側・非麻痺側AMA(p<0.01)・AMA麻痺側比、麻痺側・非麻痺側CC(p<0.05)であった。しかし、年齢やBMIには有意差は認められなかった。
【考察】今回、相関係数と4群比較ともに共通し、栄養評価であるAlb、MNA、麻痺側AMA、非麻痺側CCの項目で自立度との関連性が認められた。疾患・身体機能がともに回復する時期から、栄養状態、嚥下機能、上下肢の筋量の向上に向けて介入が行っていくことで、退院時の自立度向上につながると考えられる。また、退院時の自立度の予測にも栄養評価が重要であることが示唆された。今後、これらのデータをさらに蓄積し、脳卒中患者の基準値を作成することで、予後予測の補完的な指標としても活用することができると考えられる。

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© 2007 社団法人 日本理学療法士協会近畿ブロック
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