関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第38回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: P-021
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Ataxic hemiparesisを呈した視床出血の症例に対して順モデルの強化と大脳皮質での学習に特化した介入を行なった一例
中村 彩山本 智史
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抄録

【目的】Ataxic hemiparesis(以下AH)は一側の上下肢に脱力または錘体路徴候があり,さらに小脳性の運動失調を呈する特異な障害である.また,感覚障害を伴わず運動失調のみが出現することは少ない.本症例では感覚障害を伴わないAHに対し,順モデルの強化と大脳皮質での学習に特化した介入を行なった結果,独歩自立に至ったため報告する.

【方法】症例は50代男性で左視床出血を呈した患者である.第18病日目の脳画像では,視床の外側腹側核(以下VL核)に出血が残存していた.第30病日目に当院に転院した.入院時のBrunnstrom recovery stage(以下BRS)はⅤ−Ⅴ−Ⅴ,表在・深部感覚は正常であったが,独歩ではつまずきが多く,中等度介助を要した.快適歩行速度は0.28m/sであった.また,Scale for the assessment and rating of ataxia(以下SARA)は11点とカットオフ値を超えており,右下肢の失調(踵すね試験SARA4点)を認めた.そのため理学療法介入では,歩行器歩行練習を30分以上行うこととし,順モデルの強化と大脳皮質での学習に特化した介入を行った.また,本発表は当院の倫理規定に従い個人情報の取り扱いに十分に配慮し,ヘルシンキ宣言に沿って行った.

【結果】第90病日でT字杖歩行自立し,第125病日で独歩自立となり,つまずきは消失した.BRSは変化がなかったが,SARAは5.5点に改善した.また,快適歩行速度は0.92m/secと歩行速度も向上した.しかし,右下肢の失調は踵すね試験でSARA3点と失調は残存した.

【考察】本症例は順モデルの強化と大脳皮質での学習に特化した介入によって,下肢の運動失調が残存したものの独歩自立に至った.VL核の損傷による運動失調は,小脳から視床を介して運動野に出力されるフィードフォワードの障害によって引き起こされていると考えられる .そのため,大脳皮質での学習とフィードバック回路の順モデルの強化を目的とした歩行器歩行練習中心の介入を行った結果,教師なし学習や最適フィードバック理論での学習が進んだことが考えられる.

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© 2019 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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