関東甲信越ブロック理学療法士学会
Online ISSN : 2187-123X
Print ISSN : 0916-9946
ISSN-L : 0916-9946
第38回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: O-111
会議情報

口述
食道がん術後身体機能維持を目的にCRP値に着目して介入した一例
宮澤 明穂池田 一樹山本 喜美夫
著者情報
キーワード: 食道がん, 周術期, 身体機能
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】食道がん手術は高度術侵襲であり,低栄養,筋蛋白異化亢進,身体機能低下を呈することが多い.周術期管理としては,呼吸リハビリテーションとともに術後早期に経腸栄養を開始することが推奨されている.若林は侵襲時の同化期の目安をCRP3.0mg/dl以下とする指標を提案しており,本症例ではCRP値に着目し理学療法を実施したため報告する.

【症例と方法】症例は,食道がんに対し開胸開腹食道亜全摘出術を施行された50代女性.手術時間は7時間52分,出血量は180ml.術後2日目より経腸栄養を開始,術後5 日目に飲水を開始,術後7日目に縫合不全と診断され絶飲食.その後,常食摂取可能となり術後63日目で退院した.理学療法は術後1日目より離床を開始,筋力強化練習はCRP値3.0mg/dl以下を目安に術後10日目より開始した.運動負荷は修正Borg scale 4以上となるよう設定した.体重,筋肉量,握力,等尺性膝伸展筋力,6分間歩行距離を経時的に測定した.握力,等尺性膝伸展筋力は左右の平均値とした.

【説明と同意】ヘルシンキ宣言に基づき説明と同意を得た上で実施した.

【結果】術前/術後32日/退院時の身体機能は,体重(kg) 46.7/48.3/50.8,筋肉量(kg)16.4/17.4/18.0,握力(kg) 18.8/22.4/18.4,等尺性膝伸展筋力(kgf)17.9/17.2/18.0,6分間歩行距離(m)495/510/485であった.

【考察】牧浦らは食道がん術後,身体機能は有意に低下すると報告している.今回,術後早期より経腸栄養を開始し,必要エネルギー量が適切に投与されたうえで同化期とされる時期に筋力強化練習を実施し術後身体機能が維持された.筋蛋白異化亢進を助長させずに理学療法介入するうえで,CRP3.0mg/dl以下という指標は安全に理学療法を展開するための有用な指標と考えられた.

著者関連情報
© 2019 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
前の記事 次の記事
feedback
Top