関東甲信越ブロック理学療法士学会
Online ISSN : 2187-123X
Print ISSN : 0916-9946
ISSN-L : 0916-9946
第38回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: O-094
会議情報

口述
移乗歩行が改善した両側麻痺に重度認知症を合併する症例〜ロボットスーツHAL®のサイバニック自律制御を用いて
小此木 直人
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに】ロボットスーツHAL®(以下HAL)は、装着者の随意運動意図に基づくサイバニック随意制御(以下CVC)と、HAL内部の運動データベースに基づくサイバニック自律制御(以下CAC)を主な制御機構としている。今回、両側麻痺に重度アルツハイマー型認知症(以下AD)を合併する症例に対して、HALのCACを用いた歩行練習を行った結果、移乗・歩行の改善が図れたため、報告する。

【症例紹介】80代男性、主病名は左側頭葉皮質下出血。 既往にAD、脳梗塞左片麻痺あり。X日に失語症、右片麻痺あり入院。X+14日、当院回復期病棟へ転院。入院時BRSは右上肢Ⅲ-手指Ⅲ-下肢Ⅱ、左上肢Ⅴ-手指Ⅴ-下肢Ⅳ。HDS-Rは4点、ADLは食事以外全介助。

【倫理的配慮】本人および家族の同意を得ており、医療法人大誠会グループ倫理審査委員会の承認を得ている。

【経過】入院時より理学療法を開始。移乗・平行棒内歩行時には小刻みのステップ動作が著明であり、動作に全介助を要していた。X+44日、ステップ動作の改善を図るためHALのCVCを用いた歩行練習を開始。計3回実施するも、随意制御下での両下肢の振り出しは困難であった。X+80日、歩行パターンの学習のためCACに切り替えて歩行練習を開始。立脚側への体重移動を誘導することで、スムーズな遊脚側の振り出しが可能であり、HAL介入終了後はサークル歩行器での歩行も可能となった。計12回のHAL介入を実施し、X+159日の退院時BRSは右上肢Ⅳ-手指Ⅳ-下肢Ⅳ、ADLは移乗・更衣の介助量軽減が図れた。

【考察】本症例は脳血管障害による両側麻痺および重度ADによる身体認識の低下をきたしていたが、HALのCAC介入により、立脚側へ体重移動して遊脚側を振り出すという歩行パターンを再学習したことで、歩行器歩行練習や、移乗の介助量軽減に繋げることが出来たと考えられる。

【まとめ】両側麻痺に重度ADを合併する症例に対して、HALのCACを用いた介入を行い、移乗・歩行の改善を図ることが出来た。

著者関連情報
© 2019 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
前の記事 次の記事
feedback
Top