関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第38回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: F-067
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フレッシュマン
股関節方向性課題によって麻痺側不使用の改善を認めた左大腿骨転子部骨折の症例
香山 雄哉入倉 伸太郎木島 隆
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抄録

【はじめに】脳梗塞左片麻痺の既往と,左大腿骨転子部骨折の受傷で左上下肢の不使用の学習が進行した症例に対し,方向性課題を使用し介入を行った.その結果,実用的な起立・移乗動作を獲得した症例を経験したため報告する.

【症例紹介】80代男性.2017,10に脳梗塞・左片麻痺を 発症.2018,9左大腿骨転子部骨折を受傷.保存加療にて同年10,17に当院転院.入院時,BRSは左Ⅴ−Ⅴ−Ⅳ.感覚は表在,深部共に左上下肢軽度鈍麻.座位姿勢は右後方重心,左股関節外旋位.起立は右上肢で支持物を引き込む非麻痺側過剰努力に依存し,右後方重心を認めた.症例は「左手足は信用できないから使わない」と語り,左上下肢不使用の学習を認めた.FIMは58点であった.

【治療方針】症例の内省から,右上下肢依存の経験による左上下肢不使用の進行を考えた.不使用肢からの運動感覚情報は減少し,身体図式の変容を招き,座位から異常姿勢を呈したと考えた.よって左股関節の方向性機能の改善を図る運動課題を臥位から行い,抗重力位へと発展させ,座位姿勢の修正と基本動作への左下肢の参加を促すことで起立・移乗動作獲得に寄与すると考えた.尚,治療方針は患者及び家族に十分に説明し書面にて同意を得た.

【治療方法・結果】運動課題は,段階的治療に基き,臥位から股関節に方向性課題を他動・自動運動で実施し,股関節正中位の認識を促す.徐々に抗重力位での運動課題に発展し,座位姿勢の修正を促す.経過の中で,「がに股では立ちにくい」との内省があり,起立動作以降で左下肢の動作参加を認めた.入院8週目で,起立・移乗動作を獲得しFIM88点となり,施設退院となる.

【考察】本症例は方向性課題によって股関節正中位を再認識し,座位姿勢が修正されたことで,起立時の右下肢への荷重が可能となり,起立動作が安定したと考えた.そして,左下肢を参加させて起立動作を遂行できた経験により,起立動作以降での左下肢動作参加に寄与したと考えた.

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© 2019 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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