関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第31回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: 31
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大腿骨近位部骨折術後患者の歩行再獲得に関わる術後早期動作能力の検討
吉田 啓晃川幡 麻美相羽 宏中山 恭秀
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抄録

【目的】
大腿骨近位部骨折患者において術後歩行再獲得に関わる術後早期の動作能力を探るため、退院時歩行能力により自立群と非自立群に分類し、荷重開始時および荷重開始1週後の動作能力を比較することを目的とした。
【方法】
当院にて手術、理学療法を施行した患者37例のうち、受傷前歩行能力がT字杖歩行自立以上の21例を対象とし、指示理解が困難な者は除外した。内訳は男性3例、女性18例、大腿骨頚部骨折17例、転子部骨折4例であった。術式は人工骨頭置換術、CHS、γ-nailで、後療法は術後1週間以内に全荷重が許可された。
退院時に杖なしあるいはT字杖使用下での歩行が自立した者を自立群(13例)、T字杖歩行に付き添いが必要か、他の補助具を使用している者を非自立群(8例)に分類し、術後早期の基本動作能力を比較した。基本動作能力はAbility for Basic Movement Scale(ABMS)を用い、寝返り・起き上がり・座位保持・起立・立位保持の各項目を6段階で評価した。歩行は長さ3.5mの平行棒による直線歩行にて、監視以上と要介助に分類した。また年齢、受傷前Barthel Index(BI)、在院日数を調査した。2群間の比較はMann-Whitney U検定、χ2検定を用いた。本研究はヘルシンキ宣言に基づき患者の同意を得て行った。
【結果】
年齢(自立群/非自立群:79.3±7.5歳/82.5±8.2歳)、受傷前BI(98.8±4.2点/98.1±5.3点)、在院日数(31.8±8.1日/34.0±6.9日)は、2群間に差はなかった。荷重開始時のABMS(24.7±4.1点/19.0±2.9点)、荷重開始から1週後のABMS(27.2±2.7点/21.7±3.5点)は、両時期ともに自立群が有意に高値であった(p<.01)。各項目をみると、寝返り・起き上がり・起立・立位保持で自立群は高値を示した。平行棒内歩行能力(監視以上:要介助)は、荷重開始時(12:0/2:6)、荷重開始1週後(12:0/6:2)であり、自立群は荷重開始時の歩行能力が高かった(p<.05)。
【考察】
荷重開始時に平行棒内歩行ができた者が退院時に杖歩行自立に至っていたことから、術後早期の患肢支持性が歩行の予後予測因子となりうると考えられた。また、ABMSの各項目をみると、退院群は患肢の支持性を必要とする起立、立位保持能力の得点が高いだけでなく、寝返り、起き上がりについても高かった。これは、術後早期より患側股関節周囲の筋力を発揮できることでそれらの動作を可能としていると考えられ、自立群は患肢の機能改善が早いと推察される。
【まとめ】
自立群と非自立群では荷重開始時のABMS得点や平行棒内歩行の可否に差がみられ、これらの評価によって術後早期に自立歩行の再獲得を予測できる可能性が示唆された。

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© 2012 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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