関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第31回関東甲信越ブロック理学療法士学会
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維持期脳卒中患者に対するボツリヌス療法施行後のストレッチ介入方法の検討
成尾 豊上野 貴大新岡 大和山口 大輔
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抄録

【目的】
ボツリヌス療法(以下BTX)は、局所性筋緊張亢進を伴う上下肢痙縮疾患に対し、ボツリヌストキシンを筋肉内に注射することで、筋緊張緩和を図る治療法である。また、BTX施行後のリハビリテーション介入としてストレッチは有用であるとされているが、具体的なストレッチの介入方法までは示されていない。そこで今回は、静的ストレッチ(static stretching;SS)と動的ストレッチ(dynamic stretching;DS)に着目し、各ストレッチ施行後の即時的効果についてBTX施行された維持期脳卒中患者一症例での検討を行った。
【方法】
対象は脳出血により左片麻痺を呈し、発症から2年6ヶ月経過した50歳代男性であり、腓腹筋、ヒラメ筋に対しBTXを施行された。SSとしてティルトテーブル立位での下腿三頭筋の持続的伸張を2分間実施し、DSとして長坐位にてベッドの足に固定されたチューブを中足骨背側部にかけ、足関節最大底屈位から最大背屈位までの自動運動を1Hzのリズムで20回実施した。SSをPlanA、DSをPlanBとし、ABBAデザインのもと、BTX施行後1週目より4週の間で各介入4回づつ実施した。介入後に即時効果判定のため評価を行ない、SS、DSでの結果の平均値を比較した。評価項目としては関節可動域(Range of motion;ROM)、筋緊張検査(Modified Ashworth Scale;MAS)、疼痛検査(Numerical Rating Scale;NRS)、歩行検査(10m歩行検査)とした。尚、対象症例及び家族に対し、本研究の趣旨を説明し同意を得た上で研究を実施した。
【結果】
BTX施行1週目と比べ4週目の結果において、ROMでは-5°から0°への向上がみられ、MASは腓腹筋が2から1へと改善した。更に、10m歩行検査は15.99秒・24歩から12.04秒・18歩と改善がみられた。
SS、DS介入後の即時効果としては、ROM、MASにおいては大きな差を認めなかった。10m歩行検査では、DSで13.63秒・20.25歩、SSでは14.01秒・21.62歩であり、SSと比べDSで歩行時間が短く、歩数が少なかった。
【考察】
今回のケーススタディではDSとSSで10m歩行検査において差がみられた。これはDS介入によって足関節ROM向上、MAS改善に加え、前脛骨筋への促通作用が得られ、IC~LR時のヒールロッカーファンクションが促通されたためと考えられた。
【まとめ】
今回の症例検討においても過去の報告と同様にストレッチの有用性が示された。今回は、一症例での報告ではあるが、BTX施行後のSS、DS介入による効果の傾向が示せたことは今後のストレッチ介入方法の選択において有意義であったと考えられる。

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© 2012 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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