関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第25回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: 33
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心疾患患者の年代別各種筋力特性と各種呼気ガス指標との関係
*高橋 哲也熊丸 めぐみ立石 真純河野 裕治田屋 雅信宮澤 寛子
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キーワード: 心疾患, 筋力, 運動耐容能
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抄録

【はじめに】近年、心疾患患者の理学療法では各種呼気ガス指標に加えて下肢筋力についても注目されている。これまで、運動耐容能と下肢筋力の関係についての報告は数多くなされてきたが、年代毎の筋力特性や、最大膝伸展筋力以外の骨格筋機能(呼吸筋力など)と運動耐容能との関係などについては十分な解析が行われてきたとはいい難い。
【目的】心疾患患者における運動療法開始時の各種骨格筋機能と心肺運動負荷試験の諸指標との関連を年代ごとに分析し、心疾患患者の筋力特性を明らかにすること。
【方法】対象は当院リハビリテーション課に心臓リハビリテーションの依頼のあった心疾患患者299例である。男性243例、女性56例、平均年齢は63.7(21-85)歳、疾患の内訳は狭心症患者103例、急性心筋梗塞患者66例、心臓外科手術後126例、その他4例であった。心肺運動負荷試験終了後に、下肢筋力、呼吸筋力、握力を測定した。下肢筋力の測定は等速性筋力測定装置を用いて、下肢筋力は角速度60度/秒と360度/秒で最大膝伸展トルクを測定し体重で除した体重比を算出した。併せて、最大呼気・吸気筋力を電子呼吸筋力計で測定した。心肺運動負荷試験からは換気効率の指標である二酸化炭素排出量に対する換気当量の傾き(VE/VCO2 slope)、最高酸素摂取量(peak VO2)、嫌気性代謝閾値での酸素摂取量(AT-VO2)を算出し、各骨格筋筋力指標の年代毎の平均値を算出し相互関係を分析した。
【結果】握力、呼吸筋力、肺活量、下肢筋力は年代が上がるに従い有意に低値を示した。吸気筋力の年代別の値(cmH2O)は49歳以下59.1、50-59歳55.3、60-69歳56.9、70歳以上44.7、呼気筋力の年代別の値(cmH2O)は49歳以下74.3、50-59歳72.7、60-69歳72.6、70歳以上57.9であった。膝伸展筋力(体重比)の年代別の値は49歳以下172.3%、50-59歳160.1%、60-69歳140.7%、70歳以上116.5%であった。また、peak VO2やAT-VO2は年代別に差を認めなかったが、VE/VCO2 slopeは年代が上がるに従い有意に高値を示した(49歳以下30.7、50-59歳32.8、60-69歳33.9、70歳以上35.8)。また、各年代でpeak VO2と下肢筋力、VE/VCO2 slopeと下肢筋力との間に負の相関関係を認めたが、呼吸筋力は、peak VO2やAT-VO2と無相関であった。下肢筋力は各年代で運動耐用能と換気効率に関係しており、下肢筋力は理学療法にとっても重要な因子であることが示されたが、呼吸筋力は各種呼気ガス指標と独立した因子であり、呼吸筋トレーニング導入は目的を明確に行うことが重要であると考えられた。

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© 2006 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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