関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第25回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: 32
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心臓外科手術後早期の呼気終末炭酸ガス分圧の臨床応用について
*河野 裕治高橋 哲也熊丸 めぐみ立石 真純田屋 雅信宮澤 寛子櫻井 繁樹安達 仁金子 達夫大島 茂谷口 興一
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抄録

【背景】心疾患患者の心機能評価として理学療法士が実施可能な検査の一つに呼気ガス分析がある。呼気ガス分析から得られる嫌気性代謝閾値(anaerobic threshold; AT)や最高酸素摂取量が再現性のある予後予測指標として知られているが、実際の臨床現場では最大運動負荷は患者にとって侵襲が強いばかりか、リスクも高く理学療法士が行う評価としては実際的ではない。近年、安静時の呼気終末炭酸ガス分圧(PETCO2)が人工呼吸器装着患者のモニタリング指標として用いられるようになってきている。PETCO2は肺血流量(心拍出量)を反映する指標であることから心不全の重症度によって影響を受けるという報告もあるが、理学療法場面での臨床応用についてはまだ検討が少ないのが現状である。そこで本研究では安静時と運動時のPETCO2に着目し、心臓外科手術後患者の心臓モニタリング指標としての臨床応用性について検討した。
【方法】対象は当院で心臓外科手術を受け、その後にリハビリテーション指示が出た患者10例(男性9例、女性1例)とした。内訳は、冠動脈バイパス術5例、弁置換・形成術5例であった。被験者は5分間の安静座位の後、リカンベントエルゴメータを用い20ワットで5分間の一定負荷運動を行った。運動中は呼気ガス代謝モニタメータマックス3B(CORTEX)を用いPETCO2などの各種呼気ガス指標を連続測定した。測定時期は運動負荷試験(CPX)後と退院直前とし、食後2時間以上開け同一時間帯に実施した。呼気ガスデータの分析には安静時、運動時それぞれにおいて安定した後半3分間の平均値を採用し、安静時PETCO2と運動時から安静時を引いた値(?PETCO2)を心臓外科術後の経過と比較し、左室駆出率(LVEF)や自覚症状などとの関連を検討した。
【結果および考察】安静時のPETCO2はCPX後に比べて退院時で有意な改善を示した(p<0.01)。また?PETCO2の平均値は手術後の経過とともに有意に改善した(p<0.05)。PETCO2とLVEFには相関関係を認めなかった。安静時のPETCO2はCPX時から退院時までに有意な改善を認めたが、各測定時点での安静時PETCO2と?PETCO2の間には相関関係を認めず、安静時PETCO2から運動中の肺血流量(心拍出量)の増加を推定することは困難であったが、対象患者のADL拡大とともに安静時・運動時のPETCO2の値が改善したため、手術後早期の心臓モニタリングの一つの指標として活用できる可能性が示唆された。

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© 2006 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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