理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-B-8-5
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口述
脳梗塞急性期にて体重免荷式歩行器を用いた重症度別のアプローチに関する経過
徳田 和宏海瀬 一也竹林 崇小山 隆藤田 敏晃種子田 護
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抄録

【はじめに・目的】

 脳卒中急性期において早期立位、歩行は強く勧められている。そう行った流れの中で、近年、体重免荷式歩行が結果を残している。しかし、実施するには機器の購入や施設の補強工事など費用が大きく、さらに急性期では点滴やチューブ類などリスク管理に関する問題もある。そこで当院では2013年4月より体重免荷式歩行器を用いた早期離床を開始した。しかし、本機器を用い積極的な離床を実施した報告はなく、どのような経過をたどるかも不明である。そこで、本介入が身体機能やADLに与える影響を重症度に応じて調査したので報告する。

【方法】

 対象は2013年4月~2015年3月、脳梗塞を急性発症し当院へ搬送された後、体重免荷式歩行器を用い進行した71例とし、NIHSSを用い軽度(6点以下)19例、中等度(7点〜14点)37例、重度(15点以上)15例の3群に分類した。また、それぞれの身体機能とADL経過について、NIHSS総得点、NIHSS下位項目である意識水準、意識障害(質問・従命)、注視、視野、顔面麻痺、上肢の運動、下肢の運動、運動失調、感覚、言語、構音障害、消去/注意とFIM運動、FIM認知、FIM総得点の経過を開始時、2週時、退院時で調査し、経過の検討について繰り返しのある一元配置分散分析後、有意差があった場合、Tukey法にて多重比較を行った。有意水準はそれぞれ5%とし、さらに、3群の効果の大きさを比較するためGlassΔ係数を用いた。

【結果】

 全ての症例において有害事象は認めなかった。繰り返しのある一元配置分散分析の結果、全ての群で有意な変化を認めた項目はNIHSS総得点、麻痺側上肢、麻痺側下肢、FIM運動、FIM認知、FIM総得点であった。効果量についてΔ0.80を超える大きな改善を認めた項目と数値を軽症群、中等群、重症群の順に示す。NIHSS総得点(1.62、1.24、1.75)、麻痺側下肢(0.94、0.87、1.04)、FIM運動(3.62、2.28、4.12)、FIM総得点(2.85、1.37、4.27)であった。なお FIM効率は、軽症群1.03、中等群0.42、重症群0.33であった。

【考察】

 今回の背景が自然回復の影響を大きく含む急性期ということもあり、NIHSS総得点は全ての群で大きな改善を認める結果になった。しかし、麻痺側下肢や意識水準についても中等度から大きな改善を認めており、本機器による早期歩行が機能回復を促進させるメカニズムに影響を及ぼしたかもしれない。また、武久は急性期病院のFIM効率について0.202と報告しているが、本介入は全ての群でこれを上回っている。以上のことからも、体重免荷式歩行器を用いた介入研究を実施する価値があることが推察される。今後は、今回求めた効果量を鑑み、歩行に焦点を絞った前向き臨床介入試験などで検証していく必要がある。

【倫理的配慮,説明と同意】

 体重免荷式歩行器の使用において、本人、家族に十分説明の上同意を得て実施し、本報告はヘルシンキ宣言を遵守した上個人情報が特定できないよう十分配慮している。また、本研究プロトコルに関しては、当院倫理委員会の承認(承認番号:2017-4)を受けている。

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© 2019 日本理学療法士協会
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