理学療法学Supplement
Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-NV-14-5
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急性期病院におけるFIMを用いた予測式の有用性
~予測値と実測値の一致度について~
豊島 晶植村 健吾村上 嘉奈子廣瀬 俊彦叶 世灯青木 敦志姜 治求桑田 彩加永善 俊充平井 沙織山﨑 知秀山辺 美帆上田 千晶森下 勝行
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抄録

【はじめに,目的】

脳卒中の予後予測は,小山らによる対数モデルを用いた予後予測法がある。Functional Independence Measure(FIM)を用い,回復期リハビリテーション病院(リハ病院)に入院した症例を対象としている。先行研究では予測値と実測値の相関関係が報告されているが,急性期における一致度の検証はない。そこで,当院が実施している発症後90日時のFIMを用い,予測値との一致度を検証した。急性期から予測可能となれば,個別的な理学療法(PT)プログラムの立案が可能となる。本研究では,小山らの予後予測法を急性期へ応用するため予測値と実測値の一致度を明らかにすることを目的とした。

【方法】

対象は2014年1月~2017年7月に当院に入院した脳卒中患者1266名のうち以下の条件に適合し,発症後90日評価が可能であった94名を対象とした。対象の属性は,脳梗塞43名,脳出血42名,クモ膜下出血9名,男性49名,女性45名,年齢72.2±12.9歳であった。転帰先は,リハ病院60名(65%),自宅2名(2%),療養型病院・老健施設31名(33%),平均在院日数は34.8±15.5日であった。評価項目は,1.PT開始時の運動FIM(A),2.発症後2週間の運動FIM(B),3.退院時運動FIM(C),4.発症後90日の運動FIM(D)とした。予測式を用いA,B,Cの実測値を代入し,A-Bから発症後90日の予測運動FIM(A'),B-Cから発症後90日の予測運動FIM(B')とDの実測値を比較した。発症後90日は退院後となるため,来院時または電話調査による回答にて評価を実施した。統計解析は,発症後90日のA'およびB'の予測値と実測値の差を確認するためウィルコクソンの符号付順位和検定を用いた。その後,κ係数(Landis,1977)を用いてA'とD,B'とDの一致度を求めた。

【結果】

A-Bを用いた予測は,A'はFIM37.0(13.0-91.0),DはFIM71.0(13.0-91.0)で有意に異なったものの(p<0.01),κ係数は一致した(κ=0.24)。B-Cを用いた予測は,B'はFIM57.0(13.0-91.0),DはFIM65.5(13.0-91.0)で有意差は認められず,κ係数はかなり一致した(κ=0.65)。

【結論】

PT開始時の運動FIMと発症後2週間の運動FIMを用いた予測式では,予測値と実測値の一致度は低く,この時期の予測式の使用は適していない。発症後2週間の運動FIMと退院時運動FIMを用いた予測式では予測値と実測値の一致度は良好であった。発症後2週間の運動FIMと退院時運動FIMを用いた予測が発症後90日の運動FIMを予測するうえで有用であり,今後関連病院との連携に役立て円滑なリハビリテーションが提供できるように協力していきたい。

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© 2017 日本理学療法士協会
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