理学療法学Supplement
Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-MT-07-5
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肩関節周囲炎に対する初期評価Shoulder36と可動域制限の関係性について
藤原 旭紘橋本 裕一川崎 怜美山名 孝治中嶋 遥佳山本 一平千葉 啓輔原 翔太白沢 ゆかり中島 慎一郎
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抄録

【はじめに,目的】

理学療法を行うにあたり,評価や治療は客観的評価が中心となりやすいが,患者の主観的評価も重要である。整形外科での高頻度疾患である肩関節周囲炎を対象に主観的評価を調査した。肩関節周囲炎は疼痛,運動制限,年齢的要素の三原則を主徴とする症候群である。主観的評価には疼痛の関与がこれまでに報告されているが,本研究では可動域制限が及ぼす影響について検討した。

【方法】

対象は2016年3月16日~10月17日に当院を受診し,肩関節周囲炎と診断された40名42肩(男性10名,女性30名)とした。平均年齢65.0±11.6歳,平均屈曲角度126.1±28.1°,平均外転角度120.7±34.6°,平均結帯動作L3-4レベル。この対象者を関節包と腱板の張力が一定となる屈曲120°,肩甲骨が上肢を支持する要支持関節初期角度の外転120°を基準値として群分けした。除外基準として腱板損傷,骨折,外傷,神経疾患を合併している者とした。対象者に対し,Shoulder36(以下,Sh36)を用い主観的評価を行った。客観的評価は同一の検者が行い,肩関節屈曲,外転,結帯動作(視診・触診)を自動可動域で測定した。Sh36の評価シートへの記述は,使用手引きに則し,バイアスの入りにくい待合室や自宅などで回答し,後日回収した。各領域間の重症度得点有効回答の平均値を算出し,各群の同領域比較は対応のないt検定を用い,領域間の相関係数にはSpearmanの順位相関係数を用いた。有意水準は5%未満とした。

【結果】

屈曲・外転とも120°以上の群(以下,広域群)と120°未満の群(以下,狭域群)に分け,Sh36を比較した。広域群は,平均年齢66.4±13.5歳,男性9名,女性12名の計21名,平均屈曲角度149.8±14.2°,平均外転角度151.0±16.9°結帯動作L2-3レベルであった。狭域群は,平均年齢63.5±9.1歳,男性2名,女性19名の計21名,平均屈曲角度102.4±16.1°,平均外転角度90.5±16.8°,結帯動作L4-5レベルであった。広域群と狭域群の同領域で比較した結果,全ての領域で有意差はなかった。各群6領域間全てに5%水準の相関関係を認めた。

【結論】

本研究結果から,肩関節疾患患者のQOLを反映するSh36の各領域は相互に影響を与えていると考える。先行研究からもSh36の各領域は独立することはないと報告されており同様の結果となった。Sh36に疼痛が影響している報告はみられる。しかし,本研究より,可動域制限の広狭は主観的評価に反映されず,2群の可動域領域の差も0.17点と低値であった。運動制限により明らかに困難なADL動作がある中で,痛みの生じない代償動作や,健肢や両側で動作を補っている可能性がある。患者の主観的評価として簡便なSh36のみを利用すると正しく評価出来ない可能性があり,ADL評価法も吟味して主観的評価を検討する必要があると考える。

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© 2017 日本理学療法士協会
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