理学療法学Supplement
Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-MT-04-4
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3m歩行テストの有用性の検討
佐藤 教文
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抄録

【はじめに,目的】

10m歩行テストは,歩行能力を評価する指標として広く用いられている。実際に評価する際には,歩行路を確保できても病棟等では他職種や患者様等が多く,声掛けや時間調整を行わなければならず困難なことも多い。そこで10m歩行テストができない場合の別法として,3m歩行テストが提案されている。しかし,先行研究では,高齢者に対して3m歩行速度評価は実施されているが,疾患を有した方を対象とした検討は少なかった。そこで本研究の目的は整形外科疾患患者を対象に,3m歩行テストを10m歩行テストの結果と比較検討することによりその妥当性を検討し,小スペースにおける歩行評価としての可能性を探ることである。

【方法】

本研究に同意を得られた健常成人10名(以下健常群),年齢23.8±1.4歳,整形外科疾患者10名(以下疾患群),年齢83.5±6.1歳を対象とした。疾患は,大腿骨頚部または転子部骨折の術後の方で,歩行能力がFIMで6点以上及びHDS-Rが21点以上の方を対象とした。健常群と疾患群に,10m歩行テストと3m歩行テストを行った。疾患群は必要に応じて杖を使用した。10m歩行テストは,計測区間10mの歩行路に開始線前と終了線後に3mの予備路を設けた計16mで行った。また,3m歩行テストは,計測区間3mの歩行路に開始線前と終了線後に1.5mの予備路を設けた計6mを用いて歩行を実施した。測定は快適歩行で行い,各条件を2回ずつ施行し,測定間に休憩をはさみ,主観的疲労度がない状態であることを確認した上で行った。

統計解析は,各群の3m歩行データ(歩行速度と歩行率)と10m歩行データとの差の分析に対応のあるt検定を用いた。有意水準は5%とした。

【結果】

1,歩行速度

健常群10m歩行78.4±10.4m/分,3m歩行75.3±9.8m/分。疾患群10m歩行40.1±16.2m/分,3m歩行42.5±14.5m/分。

2,歩行率

健常群10m歩行124.5±6.23歩数/分,3m歩行140.8±8.5歩数/分。疾患群10m歩行102.2±17.9歩数/分,3m歩行110.6±21.1歩数/分。

統計解析の結果,両群ともに,歩行速度では10m歩行テストと3m歩行テスト間有意差は認められなかった(疾患群;p=0.370,健常者群p=0.1350)。しかし,歩行率では両群とも,有意差が認められた(両群ともp<0.01)。

【結論】

10mと3mの歩行テストの歩行速度は,両群ともに有意差は認められなかったが,歩行率では有意差が認められた。本研究の結果より,3mの距離でも疾患群の歩行速度を評価することは有用であると考える。

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© 2017 日本理学療法士協会
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